季節は巡り、隣のあなたはいつでも美しい
「ミズキさん」
「……うん」
いつの間にか夜が更けていた。
鬼である俺は夜目が効くから、気づかなかった。
花菜と手をつないだ澪が無表情で俺を見上げていた。
「悪いな。お前の故郷、亡くなっちまった」
澪は無言のまま、辺りを見回している。
これで愛想を尽かされちまっても、まあ、しゃあねえよなあ。
黙ったまま、澪の沙汰を待った。
「母様」
しかし、それより先に花菜が声を上げた。
「お腹空いた」
「……そうよねえ。帰りましょうか」
「いいのか」
「子どものお腹を空かせたままにはできませんよ」
きっぱりと言った澪は母親の顔で、俺がちぎって捨てた中にも、そういう顔をしていた人間がいた気がした。
「そりゃそうだ」
「父様も、手えつないで」
「汚えから、つないでやれねえなあ」
「畑仕事の後より?」
「うん」
「ミズキさんは川で汚れを落としてから帰ってきてください。……ちゃんと、帰ってきてくださいよ。私の故郷と母だけじゃなくて、夫までいなくなったら困ります」
「母?」
「ええ。ともかく、お願いします」
「……うん。わかった」
家の前まで二人を送ってから、川で体を流した。冷たかったし、人間の血を川や土地に吸わせたくなかったけど、まあ、俺の自業自得だ。
きれいにしてから帰ると、花菜が口の周りを芋でべちゃべちゃにして振り向いた。
「おかえりなさい、父様」
「うん、ただいま。」
「おかえりなさい、ミズキさん」
「……ただいま、澪」
情けない声が出た。
澪は笑いながら、俺の顔を布巾で拭った。
「……うん」
いつの間にか夜が更けていた。
鬼である俺は夜目が効くから、気づかなかった。
花菜と手をつないだ澪が無表情で俺を見上げていた。
「悪いな。お前の故郷、亡くなっちまった」
澪は無言のまま、辺りを見回している。
これで愛想を尽かされちまっても、まあ、しゃあねえよなあ。
黙ったまま、澪の沙汰を待った。
「母様」
しかし、それより先に花菜が声を上げた。
「お腹空いた」
「……そうよねえ。帰りましょうか」
「いいのか」
「子どものお腹を空かせたままにはできませんよ」
きっぱりと言った澪は母親の顔で、俺がちぎって捨てた中にも、そういう顔をしていた人間がいた気がした。
「そりゃそうだ」
「父様も、手えつないで」
「汚えから、つないでやれねえなあ」
「畑仕事の後より?」
「うん」
「ミズキさんは川で汚れを落としてから帰ってきてください。……ちゃんと、帰ってきてくださいよ。私の故郷と母だけじゃなくて、夫までいなくなったら困ります」
「母?」
「ええ。ともかく、お願いします」
「……うん。わかった」
家の前まで二人を送ってから、川で体を流した。冷たかったし、人間の血を川や土地に吸わせたくなかったけど、まあ、俺の自業自得だ。
きれいにしてから帰ると、花菜が口の周りを芋でべちゃべちゃにして振り向いた。
「おかえりなさい、父様」
「うん、ただいま。」
「おかえりなさい、ミズキさん」
「……ただいま、澪」
情けない声が出た。
澪は笑いながら、俺の顔を布巾で拭った。