『ドレスに宿る誓い』―Elara & Lanois 王国を変えた仕立て屋たち―
「今日描いていた肖像画も…あんな恥ずかしい絵が世に出てしまったら…私、もう……」

「心配いらない。さっき俺がぐちゃぐちゃに踏みつけておいた。あいつらの金儲けのために、シルヴィアの心を犠牲にすることは俺が許さない。」

「良かった。ありがとう、エルヴィン様。」

シルヴィアは胸の奥がじんと熱くなるのを感じた。
初めて知った――
この人は、
ずっと自分を気にかけてくれていたのだと。

涙で濡れたまつげを震わせながら、
シルヴィアは小さく名を呼んだ。

「……エルヴィン様」

その一言で、エルヴィンの目にも光が揺れた。

ふたりの間に、
初めて本当の心が触れ合った夜だった。
< 29 / 134 >

この作品をシェア

pagetop