『ドレスに宿る誓い』―Elara & Lanois 王国を変えた仕立て屋たち―
とある宿場町の外れ。
エルヴィンは、
黒く煤で汚した古い旅商人の外套を羽織り、
馬車の幌の隙間からそっと後方を確認した。
「……まだ追手の気配はない。クラウス、出るぞ。」
「承知しました、エルヴィン様。」
御者台に座るクラウスは、
手綱をわずかに引き、馬を落ち着かせた。
後方から顔を覗かせたシルヴィアは、
外套のフードを深く被り、声を潜める。
「エルヴィン……ひどい音がしてるわ……もうここも……」
エルヴィンは振り返り、
わずかに震える彼女の手を、
そっと自分の手で包んだ。
「シルヴィア、見なくていい。
君は…絶対に守る。ここから先は僕たちの未来だ。」
郊外を結ぶ街道沿いには、
市民の見張り台が設置されていた。
急ごしらえの武装をした男たちが
松明を掲げ、
旅人の馬車を次々と調べている。
白銀の妖精だと知られれば、
即刻捕縛。
処刑されてしまうだろう。
「エルヴィン様……どうするの……?」
シルヴィアの声がわずかに震えた。
エルヴィンは冷静だった。
むしろこの極限状態でこそ、
本来の彼の聡さが輝く。
「クラウス、台詞は覚えてるな?」
「任せてください。」
馬車が検問に近づくと、
見張り役の男が槍を構えた。
「おい、止まれ! どこへ行く!」
クラウスは大げさに頭を下げ、
ややがなり立てる調子で言った。
「す、すみません旦那! 療養に出てた商隊なんですが、
王都がこんな騒ぎとは知らずに慌てて戻ってきたんですが……!持ち物は布地と古着ばかりです!」
男は怪しむように馬車を覗き込む。
その瞬間、
シルヴィアは外套の奥で息を止めた。
エルヴィンは、
黒く煤で汚した古い旅商人の外套を羽織り、
馬車の幌の隙間からそっと後方を確認した。
「……まだ追手の気配はない。クラウス、出るぞ。」
「承知しました、エルヴィン様。」
御者台に座るクラウスは、
手綱をわずかに引き、馬を落ち着かせた。
後方から顔を覗かせたシルヴィアは、
外套のフードを深く被り、声を潜める。
「エルヴィン……ひどい音がしてるわ……もうここも……」
エルヴィンは振り返り、
わずかに震える彼女の手を、
そっと自分の手で包んだ。
「シルヴィア、見なくていい。
君は…絶対に守る。ここから先は僕たちの未来だ。」
郊外を結ぶ街道沿いには、
市民の見張り台が設置されていた。
急ごしらえの武装をした男たちが
松明を掲げ、
旅人の馬車を次々と調べている。
白銀の妖精だと知られれば、
即刻捕縛。
処刑されてしまうだろう。
「エルヴィン様……どうするの……?」
シルヴィアの声がわずかに震えた。
エルヴィンは冷静だった。
むしろこの極限状態でこそ、
本来の彼の聡さが輝く。
「クラウス、台詞は覚えてるな?」
「任せてください。」
馬車が検問に近づくと、
見張り役の男が槍を構えた。
「おい、止まれ! どこへ行く!」
クラウスは大げさに頭を下げ、
ややがなり立てる調子で言った。
「す、すみません旦那! 療養に出てた商隊なんですが、
王都がこんな騒ぎとは知らずに慌てて戻ってきたんですが……!持ち物は布地と古着ばかりです!」
男は怪しむように馬車を覗き込む。
その瞬間、
シルヴィアは外套の奥で息を止めた。