『ドレスに宿る誓い』―Elara & Lanois 王国を変えた仕立て屋たち―
王都で着火した革命の炎は
またたく間に国中に広がり、
治安は一気に崩壊した。

「エルヴィン様……このまま派遣予定地へ向かうの?」
「いや。もうウルフェニー王家は終わった。直接ウィステリアへ渡ろう。」

「直接……!? そんな遠いところへ……」

「確かに道のりは遠いが……君を守るためなら、どんな道を選んでも構わない。」

エルヴィンは迷いなく答える。
その声に、シルヴィアの胸が熱くなる。

だが――
国内ではそこかしこで検問が強化され、
“貴族らしい服装、話し方”をしているだけで
逮捕される有様だという。

シルヴィアの髪・瞳の色はどうしても目立つ。
それにバイロンご自慢の白銀の妖精は
貴族ではない国民たちにも有名だった。
エルヴィンは彼女を守るため、
服装、旅程、行動の全てを
慎重に組み直した。

亡命は決して“ロマンチックな旅”ではない。
いつ命を落としてもおかしくない、
決死の逃避行なのだ。
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