『ドレスに宿る誓い』―Elara & Lanois 王国を変えた仕立て屋たち―

エルヴィンたちの顔を見て、
「しまった。またやってしまった。」
とエラは思った。

ファッションの話になると、
ついつい相手のことを忘れて
語りすぎてしまう。

エラはいつもそうだった。
物心ついた頃から
洋服を見るのが大好きで、
裁縫ができるようになると
我を忘れて洋服作りに熱中した。

寝ても覚めても考えるのは洋服のことばかり。
そんなエラを周囲は変わり者だと呼んだ。
誰も自分のことを分かってくれない。
私のファッションへの情熱を理解してくれる人は
きっと誰もいない。
エラは湧き上がる情熱を内に閉じ込め、
殻に閉じこもるようになっていた。

けれどエルヴィンに出会って
初めて同じ情熱を持つ人に出会えたと思った。
そして、かつてデッサンを
食い入るように見つめた白銀の妖精。
エラの気持ちが浮き立つのも仕方がなかった。

エラと目が合い、
シルヴィアの顔がふわりとほどけた。
「……素敵。とても素敵な考えだわ、エラさん。」

「シルヴィアもそう思う？」
とエルヴィンが問いかける。

エラはまっすぐ彼を見つめ、
力強く宣言した。
「私は本気よ。
女性が“自由に選べる未来”を、服で後押ししたいの。」

その言葉に、エルヴィンの胸が震える。
——まさに、自分が目指していたものと同じ。

（この人となら、本当に新しい世界を作れるかもしれない……！）

エラの瞳の奥に宿る情熱は、
まぎれもなく本物だった。

シルヴィアも心から嬉しそうに微笑む。
「エルヴィン様、素敵な仲間に出会えたわね。」

その瞬間、
エルヴィンの胸の中でひとつの決意が固まった。