元プロバンドマンの部下は、私に気づかない~まさかの再会オフィスラブ~
フェスからちょうど1週間後の日曜日、和那はスタジオにいた。『Lumiere』は卒業ライブを最後に解散したが、和那たちは、親しかった他バンドのメンバ-も誘い、就職後も不定期に集まって、セッションを行っていた。スタジオ代は、その日集まった面々で割り勘にして、日頃のストレスを発散する。そんな目的で始まった集いが、開催頻度も、参加メンバ-も初期の頃から比べると、だいぶ減ってしまったが、今も綿々と続いている。


「今日は図らずも、『Lumiere』再結成になったな。」


開催日だけを決め、あとは来られる者だけが集まる。だから顔ぶれもまちまち、担当の楽器もまちまち。ふたを開けてみれば、ギタ-は4人もいるけど、ドラムスもベースもいない、なんてことは珍しくもなかったが、とにかく演奏することを楽しむ、それを唯一無二の目的にしている会だから、そんなことは参加者は誰も気にしないのだが、この日はたまたま集まったのが、かつての『Lumiere』メンバ-の5人だったことで、リーダ-だった柏木悠真が、嬉しそうに言う。


「本当だね。ここのところ、すっかり腰が重くなってたナミが、やっと来てくれたお陰だね。」


今泉柚希が揶揄うように応じると


「だからごめんって、この間会った時、謝ったじゃん。」


和那はやや膨れ気味に答える。


「まぁまぁ。とにかく、このメンバ-が揃ったとなれば、今日はちょっとマジで行かないと。な、リーダ-。」


ドラムス担当の前田(まえだ)尊が言うと


「もちろんだ。今日は2時間のうちに、卒フェスでやった3曲、バシッと決めるからな。」


悠真が応じ


「よっしゃ。気合い、入ってきた。」


バンドのムードメ-カ-だった、リ-ドギタ-の村中(むらなか)憲治が明るい声を出すと、スタジオ内に笑い声が弾ける。
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