元プロバンドマンの部下は、私に気づかない~まさかの再会オフィスラブ~
「じゃ、私から行くよ。」


「はい。」


「率直に聞くけど、本当にいいの?このままで。」


「どういうことですか?」


「わかってるくせに。」


「南澤さん・・・。」


「音楽の世界に戻らなくて。」


「戻った方がいいですかね?」


「えっ?」


「南澤さんはどう思います?」


そう言って、湊は真っすぐに和那を見た。


「それは・・・朝比奈さんが決めることだよ。」


その視線を受け止められず、ふっと目を逸らしながら、和那は言う。が


「俺は南澤さんの意見が聞きたい。」


湊は、相変わらず和那から視線を外さずに言う。


「私の意見というより・・・あの時のあなたを見て、ステ-ジに立って、あの音を出して、あの笑顔を見せてくれたあなたを見たら、戻るのが当たり前のように、私には思えた。」


「やっと答えてくれましたね。」


「えっ?」


「ずっと待ってたんですよ。いつ、ちゃんと答えてくれるんだろうって。本当は前から、俺のことを知ってたのか?っていう、あの時の俺の問いに。」


「・・・。」


「戻るのが当たり前・・・過去の俺を知らなければ、そんなセリフは言えないはずでしょ?」


そう言って、湊は和那を見る。


「そう、だね。」


とうとうコクリと頷いた和那は


「私も一応、インカレバンドにいたからさ。『Riot Beat』とボーカル兼ベースの朝比奈湊くらい知ってたよ。」


と続けた。


「それは光栄です。」


そう言って、おどけながら頭を下げた湊が


「実は俺、大学でバンド、辞めるつもりだったんですよ。」


そう語りだすと、和那は、ハッとした表情を浮かべる。
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