《TwilightNotes ― 夜明けに鳴る音》
第1章・Scene2「窓際の少年」
春の風が、またカーテンをゆらした。
ざわつく教室の中で、窓際の席だけが別の時間みたいに静かだった。
俺は、ただ外を見ていた。
校庭の桜が散り始めて、花びらが風に流れていく。
そんな景色を見てるだけで、少しだけ落ち着けた。
この学校に来て、半年。
誰かとつるむことも、ふざけ合うことも、あんまりしなかった。
笑おうとしても、どこか上手く力が入らない気がしていた。
---
「――今日からこのクラスに入る、鈴木麻里奈さんです」
担任の声に顔を上げた瞬間、視界にふっと光が差した気がした。
前に立っていた転校生――鈴木麻里奈。
緊張しているのに、ちゃんと笑おうとしている。
その素直な明るさが、なぜか懐かしく感じた。
(……この子、どこかで……)
一瞬だけ目が合った、気がした。
ほんの少し胸が跳ねる。
気のせいかもしれないのに、視線はそらせなかった。
---
休み時間。
彼女は前の席で静かにノートを開いていた。
ざわざわした空気の中、まっすぐ黒板を写している。
ときどき小さく息を吐きながら、それでも姿勢を崩さない。
気づけば、また目で追っていた。
窓の外を見ていたのは――きっと、見られている顔を隠すためだった。
(名前……麻里奈、か)
春風がまた吹いて、彼女の髪がかすかに揺れた。
その瞬間、胸の奥で小さな灯りみたいなものが、ふっと灯った。
それが何なのかは、まだわからなかった。
ただ、この日を境に、俺の世界は静かに色づきはじめていた。
ざわつく教室の中で、窓際の席だけが別の時間みたいに静かだった。
俺は、ただ外を見ていた。
校庭の桜が散り始めて、花びらが風に流れていく。
そんな景色を見てるだけで、少しだけ落ち着けた。
この学校に来て、半年。
誰かとつるむことも、ふざけ合うことも、あんまりしなかった。
笑おうとしても、どこか上手く力が入らない気がしていた。
---
「――今日からこのクラスに入る、鈴木麻里奈さんです」
担任の声に顔を上げた瞬間、視界にふっと光が差した気がした。
前に立っていた転校生――鈴木麻里奈。
緊張しているのに、ちゃんと笑おうとしている。
その素直な明るさが、なぜか懐かしく感じた。
(……この子、どこかで……)
一瞬だけ目が合った、気がした。
ほんの少し胸が跳ねる。
気のせいかもしれないのに、視線はそらせなかった。
---
休み時間。
彼女は前の席で静かにノートを開いていた。
ざわざわした空気の中、まっすぐ黒板を写している。
ときどき小さく息を吐きながら、それでも姿勢を崩さない。
気づけば、また目で追っていた。
窓の外を見ていたのは――きっと、見られている顔を隠すためだった。
(名前……麻里奈、か)
春風がまた吹いて、彼女の髪がかすかに揺れた。
その瞬間、胸の奥で小さな灯りみたいなものが、ふっと灯った。
それが何なのかは、まだわからなかった。
ただ、この日を境に、俺の世界は静かに色づきはじめていた。