《TwilightNotes ― 夜明けに鳴る音》
第4章
Scene1「少しだけ近づいた距離」
その夜、麻里奈はなかなか眠れなかった。
ベッドに横たわり、目を閉じても、瞼の裏に浮かんでくるのは──
あのときの、大和の目。
迷いと真剣さが同居した、まっすぐな視線。
そして、言葉の端に滲んだ、ほんの少し照れたような笑顔。
昔と、変わっていなかった。
優しくて、不器用で。
自分の気持ちを伝えるのが下手なくせに、
大切なものだけは、決して見逃さない人。
(……ずるいよ)
思わず、小さく呟く。
胸元の毛布をぎゅっと握りしめると、心臓の鼓動が指先に伝わってきた。
夜の静けさが、まるで心の奥を映す鏡のようで。
麻里奈は、目を閉じたまま、そっと息を吐いた。
翌朝。
撮影スタジオには、すでにスタッフの声が飛び交っていた。
照明の調整。
カメラ位置の確認。
衣装の最終チェック。
いつもと変わらないはずの現場なのに、
麻里奈の胸の鼓動だけが、やけに落ち着かない。
「おはようございます」
スタジオに足を踏み入れると、数人のスタッフが軽く会釈した。
その中に──いた。
カメラチェックをしていた大和が、ふと顔を上げる。
視線が、合った。
ほんの数秒。
けれど、昨日まで感じていた気まずさはなく、
代わりに、言葉にできない柔らかさが、空気に滲んだ。
「……おはようございます」
麻里奈が先に声をかけると、
大和は一瞬だけ驚いたように目を瞬かせ、それから少し照れたように頷いた。
「昨日……ありがとうございました」
「ううん。私のほうこそ……」
それ以上は、続かなかった。
いや、続けられなかった。
けれど、確かに感じていた。
昨日まではなかったものが、ふたりの間に生まれていることを。
――ほんの少しだけ、近づいた距離。
スタジオの奥では、須田光輝がスタッフに指示を出していた。
その視線が一瞬だけ、ふたりのほうをかすめる。
何かを確かめるように。
けれど彼は、何も言わず、静かに背を向けて歩き去った。
まだ、誰にも言葉にできない変化。
それは、気づかれないように、しかし確かに──
動き始めていた。
ベッドに横たわり、目を閉じても、瞼の裏に浮かんでくるのは──
あのときの、大和の目。
迷いと真剣さが同居した、まっすぐな視線。
そして、言葉の端に滲んだ、ほんの少し照れたような笑顔。
昔と、変わっていなかった。
優しくて、不器用で。
自分の気持ちを伝えるのが下手なくせに、
大切なものだけは、決して見逃さない人。
(……ずるいよ)
思わず、小さく呟く。
胸元の毛布をぎゅっと握りしめると、心臓の鼓動が指先に伝わってきた。
夜の静けさが、まるで心の奥を映す鏡のようで。
麻里奈は、目を閉じたまま、そっと息を吐いた。
翌朝。
撮影スタジオには、すでにスタッフの声が飛び交っていた。
照明の調整。
カメラ位置の確認。
衣装の最終チェック。
いつもと変わらないはずの現場なのに、
麻里奈の胸の鼓動だけが、やけに落ち着かない。
「おはようございます」
スタジオに足を踏み入れると、数人のスタッフが軽く会釈した。
その中に──いた。
カメラチェックをしていた大和が、ふと顔を上げる。
視線が、合った。
ほんの数秒。
けれど、昨日まで感じていた気まずさはなく、
代わりに、言葉にできない柔らかさが、空気に滲んだ。
「……おはようございます」
麻里奈が先に声をかけると、
大和は一瞬だけ驚いたように目を瞬かせ、それから少し照れたように頷いた。
「昨日……ありがとうございました」
「ううん。私のほうこそ……」
それ以上は、続かなかった。
いや、続けられなかった。
けれど、確かに感じていた。
昨日まではなかったものが、ふたりの間に生まれていることを。
――ほんの少しだけ、近づいた距離。
スタジオの奥では、須田光輝がスタッフに指示を出していた。
その視線が一瞬だけ、ふたりのほうをかすめる。
何かを確かめるように。
けれど彼は、何も言わず、静かに背を向けて歩き去った。
まだ、誰にも言葉にできない変化。
それは、気づかれないように、しかし確かに──
動き始めていた。