婿入りの顛末
やってしまった王子様 -ルーカス視点-
「殿下は小柄で可愛い子がお好みだったでしょう?」
「うん、儚げで小柄な子が可愛いらしくて良いなと思っていたよ。」
「あそこまで愛想も愛嬌も無いのは・・・」
「あら、それなら本当にお気の毒ですこと。」
ユーハイム侯爵邸の控室の扉の前で、すっきりと整った顔立ちにお手本のような笑顔を向けられ
私たち3人は瞬きすら忘れて固まった。
「準備が整いましたので応接室にお越しください。」
そう言葉をかけて背を向けて去っていったのは、この屋敷の一人娘で次期女侯爵のソフィア嬢だ。
立ち姿も所作も歩く後ろ姿さえも相変わらず完璧な美しさだな、などと感心している場合ではない。
今日、私の主たるこの国の第3王子のセドリック殿下とソフィア嬢の婚約と、殿下の婿養子縁組の締結のため侯爵邸へ赴いている。
ユーハイム侯爵と国王・王妃両陛下は執務室で婚約の条件などの最終確認中だ。
最後のサインのため、セドリック殿下と、側近であるソイル侯爵家五男の私、ルーカスと、ブラッド辺境伯家三男であるカーターは控室で待機中であったのだ。
よりにもよって、婿入り先の侯爵邸で次期女侯爵に対して軽口を叩くなど許されることではない。
更にそれをソフィア嬢本人に聞かれてしまった。誰の目にも今の状況は大失態である。
言い訳をさせて欲しい。
いつもなら二人の言葉の後に殿下が惚気け、そのあと三人でソフィア嬢を賛美するという流れになっていたのだ。学園や王城ではその一連の茶番を、やれやれまたかという目で見てくれていた。
私のセリフはこう続くはずだった。
「あそこまで愛想も愛嬌も無いのは自衛のためでしょう。あの美貌に見惚れるばかりの美しい所作は国中の令嬢からも羨望の的です。殿下も見合うように努力しませんと他の令息たちに恨まれてしまいますよ。」
と。
侯爵家を支える人間は全て主に忠実なことで有名だ。
最後まで茶番を演じられなかった私たちは、彼らの敬愛する次期女侯爵をこき下ろした大罪人だ。主をここまで蔑ろにした私たち3人を許してはくれないだろう。
セドリック殿下、私たち3人の針の筵生活が開始されました。
とりあえず口を閉じて腹を括って下さい。
「うん、儚げで小柄な子が可愛いらしくて良いなと思っていたよ。」
「あそこまで愛想も愛嬌も無いのは・・・」
「あら、それなら本当にお気の毒ですこと。」
ユーハイム侯爵邸の控室の扉の前で、すっきりと整った顔立ちにお手本のような笑顔を向けられ
私たち3人は瞬きすら忘れて固まった。
「準備が整いましたので応接室にお越しください。」
そう言葉をかけて背を向けて去っていったのは、この屋敷の一人娘で次期女侯爵のソフィア嬢だ。
立ち姿も所作も歩く後ろ姿さえも相変わらず完璧な美しさだな、などと感心している場合ではない。
今日、私の主たるこの国の第3王子のセドリック殿下とソフィア嬢の婚約と、殿下の婿養子縁組の締結のため侯爵邸へ赴いている。
ユーハイム侯爵と国王・王妃両陛下は執務室で婚約の条件などの最終確認中だ。
最後のサインのため、セドリック殿下と、側近であるソイル侯爵家五男の私、ルーカスと、ブラッド辺境伯家三男であるカーターは控室で待機中であったのだ。
よりにもよって、婿入り先の侯爵邸で次期女侯爵に対して軽口を叩くなど許されることではない。
更にそれをソフィア嬢本人に聞かれてしまった。誰の目にも今の状況は大失態である。
言い訳をさせて欲しい。
いつもなら二人の言葉の後に殿下が惚気け、そのあと三人でソフィア嬢を賛美するという流れになっていたのだ。学園や王城ではその一連の茶番を、やれやれまたかという目で見てくれていた。
私のセリフはこう続くはずだった。
「あそこまで愛想も愛嬌も無いのは自衛のためでしょう。あの美貌に見惚れるばかりの美しい所作は国中の令嬢からも羨望の的です。殿下も見合うように努力しませんと他の令息たちに恨まれてしまいますよ。」
と。
侯爵家を支える人間は全て主に忠実なことで有名だ。
最後まで茶番を演じられなかった私たちは、彼らの敬愛する次期女侯爵をこき下ろした大罪人だ。主をここまで蔑ろにした私たち3人を許してはくれないだろう。
セドリック殿下、私たち3人の針の筵生活が開始されました。
とりあえず口を閉じて腹を括って下さい。
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