日本語が拙い外国人と恋仲になりました
 今日の勤務中でのことだった。フロントの日勤は私とチョウさんとアルバイトの大学生、菅原くんの三人体制だった。チェックイン開始時間よりも早めに午前の業務が終わり、フロントでお客さんを出迎える準備をしているときに、何気ない会話を交わした。

「なあ、チョウさん。仕事はもう慣れたか?」

 菅原くんはチョウさんの顔を覗き込み、そう問いかける。
 大きく首を縦に振り、チョウさんは弾んだ声を出すの。

「たくさんの仕事を覚えましたよ。ムラオカさんがよく教えてくれたおかげだ。ワタシはとても助かっています」
「いいよなーチョウさんは。俺なんて入ったばかりの頃は、鬼の教育係に当たっちまって毎日厳しくしごかれたってのに」
「そうですね。ワタシは彼女と仕事ができて恵まれている。スガワラさんがワタシに嫉妬するのは仕方がないです」

 なんかそこまで言われると、無駄に恥ずかしくなるんだけど……。
 チョウさんの話に、菅原くんは大声で笑う。

「なんかさー、俺、チョウさんが入ってからずっと思ってたんだよなぁ。二人って気が合いそう」
「ええ? 何言ってるのよ、菅原くん」
「だって二人がいると仕事がスムーズにいくし、村岡さんも中国語話せるんっすよねぇ?」
「いや……話せないってば。勉強してる身だし。HSK三級レベルだし」

 菅原くんはやたら私とチョウさんのペアを絶賛しようとしてくる。二人と日勤の時は俺も仕事がやりやすいんっすよ、とか言い出すし。

「あれっすね、勤務後に二人で飯食いに行ったらどうっすか?」
「えっ、なんで」
「これから仕事をしていく上で他愛ない話をして、コミュニケーション取るのも大事っすよ!」
「だったら三人で行きましょうよ」
「あー……すんません! 俺、今日は彼女とデートがあるんで!」

 とかなんとか話しているうちに、チェックインの時間がやってきた。宿泊のお客さんはそんなに来ないけど、デイユース利用の人が何組か来るからちょっとだけ忙しくなる。
 チェックイン業務をしながら休憩を一人ずつ回し、デイユースのお客さんがチェックアウトしたら急いで部屋の清掃に入る。

 仕事をしているうちに菅原くんとの話なんてすっかり忘れていたけれど──チョウさんはそうでもなかったみたい。
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