日本語が拙い外国人と恋仲になりました
 幸せいっぱいの気持ちでいると──

「ねえ」

 ……突如、背後から男性の声がした。
 気のせい?
 そう思い、私はそのまま歩き続ける。

「ねえ、待ってよ。ミキ(・・)

 違う。気のせいじゃない。
 思わず、足を止めてしまった。
 ミキ? 今、私の名前を呼んだのは誰……?
 こんなところで馴れ馴れしく下の名前で呼ばれるなんて。職場では私をミキと呼ぶ人はいないのに。

 嫌な予感がした。ミキと呼びかけてきたその低い声が、私の記憶にあるものと一致する。
 もう二度と聞きたくなかったのに。虫唾が走る。

 私が固まっていると──声の主が目の前に立ち塞がった。
 黒いジャケットを着た男。満面の笑みでこちらを見下ろしている。
 見覚えのあるその顔を見た瞬間、私は絶句した。

 ……なんで? どうしてこの人が……!?

 動転する私に向かって、男はゆっくりと口を開いた。

「やっぱりミキじゃん! 久しぶり。なんだ、前よりももっと綺麗になったじゃんね?」

 顔を覗きこんでくるその男は──他の誰でもない、あの男だった。
 既婚者のくせして私と付き合っていた、最低最悪の男、大野が私の目の前に立っていたのだ。
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