日本語が拙い外国人と恋仲になりました

9・家庭の事情

「おはようございます」

 ホテルに到着しスタッフルームへ入ると、そこには頭を抱える林支配人がいた。パソコンを睨みつけるように凝視していて、小さく唸っている。
 いつにもない様子に、私は首を傾げた。

「支配人、何かありましたか?」
「……ああ、村岡さん。おはよう。ちょっとシフトをどうするか悩んでいて」
「来月のシフトのことですか?」
「いや、今月分だよ。大幅に変更をしなくちゃいけなくてさ」

 えっ、今月のシフトを今さら変えるの?
 私が疑問符を浮かべると、支配人は急に声量を落とした。

「いやぁ参ったよ。昨日チョウさんから連絡があってさ」
「チョウさんから、ですかっ?」

 その名を聞いて、私の心臓が早鐘を打ち始める。
 チョウさんが……どうしたの?
 支配人は眉を落とし、驚くことを口にした。

「実は急遽、国へ帰ることになったらしいんだよ」
「……えっ?」

 一瞬、支配人の話すことが理解できなかった。全身が強張り、なぜか冷や汗が滲み出る。
 国へ帰る……? 中国にって、ことだよね? 何があったの……?
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