日本語が拙い外国人と恋仲になりました
 思わず私は早口になってしまう。

「どうしてですか? まさかチョウさん、ホテルの仕事を辞めちゃうんでしょうか」
「いやいや、それはまだ分からないよ。緊急の用事ができたから帰ります、というようなことを言っていたなぁ」
「緊急の用事……?」
「家族の事情らしいよ。また落ち着いたら連絡しますってさ。……声を聞く限り、相当焦っていたみたいだから、長期休暇って形にはしたよ。チョウさんなら、このまま連絡なしで飛ぶことはしないと思うし」

 まあ、相当慌てていていつも以上に日本語が乱れてたから、僕も上手く話を聞けなかったんだよ、と支配人は苦笑する。
 私はそれ以上、何も訊くことができなくなってしまった。

「三週間分のシフトを大幅変更するから、もしかすると村岡さんにも協力してもらうかもしれないけど……いいかな?」
「はい。それは、大丈夫です……」

 意図せず、声が暗くなってしまった。
 家庭の事情、か。
 まさか、このまま辞めないわよね? つい数日前まであんなに一生懸命働いてたから、チョウさんがこんな形で辞めるとは考えにくい。きっと、また帰ってくるわよね……?

 そう思っていても、私は未だに返ってこないメッセージのことを思い出してしまった。
 まさか……そんな……。
 ダメダメ。これから仕事なんだから、気持ちを切り替えないと……。
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