日本語が拙い外国人と恋仲になりました
10・会いたい
◆
ある日の夜。
眠りに落ち、私は見知らぬ場所へと降り立った。キラキラと光を放つ夜の街の中。
ここは、どこだろう。
ふと隣に目を向けると、彼がいた。チョウさんが、何ごともなかったかのように屈託のない笑顔を私に向けていて。
ああ、そっか。私、夢を見ているんだ。
夜の遊歩道を、二人並んで歩んでみる。その先で、見たこともない風景が広がっていた。大きなタワーや巨大ビルが建ち並ぶ広大な街。
この景色は、私のイメージする上海の世界でしかない。
いつもチョウさんが楽しそうに話していた。上海の素敵なところを。夜景が綺麗で、料理もおいしいものがたくさんだって。街の中を案内するって、彼は言ってくれたのよね。
夢の中のチョウさんも、嬉しそうに笑っていた。眩しい光に照らされ、表情まで輝いていた。
でも──瞳の奥は、なぜだか切なさで埋もれている気がするの。
ただ無言で、川沿いの遊歩道を歩き続ける。周囲には誰もいなくて寂しい雰囲気。
いつものチョウさんなら、拙い日本語で絶え間ないお喋りをするはずだ。大抵はどうでもよくて、半分は何を言いたいのか分からない。そんな彼の話を聞くのが私は好きだった。
けれど──夢の中のチョウさんは現実とは違う人。
創造の世界で想像のチョウさんと歩いたって、なんにも楽しくないよ。
私が一人勝手に憂いていると、突然チョウさんが立ち止まった。自然と、私の足も歩むのをやめる。
「……どうしたの?」
私が問うと、チョウさんはじっとこちらを見つめた。
瞳を潤わせ、笑顔をなくしてこんなことを口にするの。
「ムラオカさん。我想你」
彼の声質そのものだった。その声は、とても震えていた。
……変なの。ただの夢なのに。妙にリアルで、目の前にいる人が、まるで本物のチョウさんなんだって勘違いしてしまいそうになる。
私はチョウさんの目を見つめ返し、ゆっくりと頷いた。
「チョウさん、私も……。あなたに、会いたいです」
我也想见你。
夢の中だとしても、この言葉だけは嘘なんかじゃない。私の本心だよ。
ねえ、チョウさん──
ある日の夜。
眠りに落ち、私は見知らぬ場所へと降り立った。キラキラと光を放つ夜の街の中。
ここは、どこだろう。
ふと隣に目を向けると、彼がいた。チョウさんが、何ごともなかったかのように屈託のない笑顔を私に向けていて。
ああ、そっか。私、夢を見ているんだ。
夜の遊歩道を、二人並んで歩んでみる。その先で、見たこともない風景が広がっていた。大きなタワーや巨大ビルが建ち並ぶ広大な街。
この景色は、私のイメージする上海の世界でしかない。
いつもチョウさんが楽しそうに話していた。上海の素敵なところを。夜景が綺麗で、料理もおいしいものがたくさんだって。街の中を案内するって、彼は言ってくれたのよね。
夢の中のチョウさんも、嬉しそうに笑っていた。眩しい光に照らされ、表情まで輝いていた。
でも──瞳の奥は、なぜだか切なさで埋もれている気がするの。
ただ無言で、川沿いの遊歩道を歩き続ける。周囲には誰もいなくて寂しい雰囲気。
いつものチョウさんなら、拙い日本語で絶え間ないお喋りをするはずだ。大抵はどうでもよくて、半分は何を言いたいのか分からない。そんな彼の話を聞くのが私は好きだった。
けれど──夢の中のチョウさんは現実とは違う人。
創造の世界で想像のチョウさんと歩いたって、なんにも楽しくないよ。
私が一人勝手に憂いていると、突然チョウさんが立ち止まった。自然と、私の足も歩むのをやめる。
「……どうしたの?」
私が問うと、チョウさんはじっとこちらを見つめた。
瞳を潤わせ、笑顔をなくしてこんなことを口にするの。
「ムラオカさん。我想你」
彼の声質そのものだった。その声は、とても震えていた。
……変なの。ただの夢なのに。妙にリアルで、目の前にいる人が、まるで本物のチョウさんなんだって勘違いしてしまいそうになる。
私はチョウさんの目を見つめ返し、ゆっくりと頷いた。
「チョウさん、私も……。あなたに、会いたいです」
我也想见你。
夢の中だとしても、この言葉だけは嘘なんかじゃない。私の本心だよ。
ねえ、チョウさん──