日本語が拙い外国人と恋仲になりました
◆
「えっ、発注ミスですか!?」
十一月中旬の月曜日。遅番で出勤してすぐ、私は支配人に呼び出されていた。
決して広くはないスタッフルームの隅に、大量の段ボール箱が置いてある。それを眺めながら両腕を組み、支配人は苦い顔をした。
「前回は村岡さんの名前で発注されていたんだけど……。トイレットペーパーを百頼むつもりだったんだろうね、ゼロがひとつ多く入力されて千ロット発注になっていたよ」
山積みにされた段ボールを見て、私は血の気が引いた。
ペーパーはワンロットで六ロールだ。私が誤って発注したのは千ロット……。つまり、六千ロールも頼んでしまったのだ。
六百ロール使い切るのにも大体一ヶ月くらいはかかるから──
計算していくうちに、頭の中がクラクラしてしまう。
「支配人、申し訳ございません……! こんなミスをしてしまって……!」
私は深く深く、これでもかというほど頭を下げた。
「ああ、いいよ。腐るものじゃないしさ」
「でも、月の発注予算は決まってますし……!」
「次気をつけてもらえばいいよ」
「支配人……」
優しすぎて、逆に居たたまれなくなる。
ふう、と深く息を吐くと、支配人は更に言いづらそうに口を動かした。
「発注の件はどうってことないんだけどさ。もうひとつ、気をつけてほしいことがあるんだ」
「はい、なんでしょう……?」
「村岡さん、以前タナカユウキ様というお客様の予約を取った覚えはあるかな?」
「タナカユウキ様、ですか?」
私は瞬時に思考を巡らせ、タナカユウキ様の予約を思い出そうとする。
「えっ、発注ミスですか!?」
十一月中旬の月曜日。遅番で出勤してすぐ、私は支配人に呼び出されていた。
決して広くはないスタッフルームの隅に、大量の段ボール箱が置いてある。それを眺めながら両腕を組み、支配人は苦い顔をした。
「前回は村岡さんの名前で発注されていたんだけど……。トイレットペーパーを百頼むつもりだったんだろうね、ゼロがひとつ多く入力されて千ロット発注になっていたよ」
山積みにされた段ボールを見て、私は血の気が引いた。
ペーパーはワンロットで六ロールだ。私が誤って発注したのは千ロット……。つまり、六千ロールも頼んでしまったのだ。
六百ロール使い切るのにも大体一ヶ月くらいはかかるから──
計算していくうちに、頭の中がクラクラしてしまう。
「支配人、申し訳ございません……! こんなミスをしてしまって……!」
私は深く深く、これでもかというほど頭を下げた。
「ああ、いいよ。腐るものじゃないしさ」
「でも、月の発注予算は決まってますし……!」
「次気をつけてもらえばいいよ」
「支配人……」
優しすぎて、逆に居たたまれなくなる。
ふう、と深く息を吐くと、支配人は更に言いづらそうに口を動かした。
「発注の件はどうってことないんだけどさ。もうひとつ、気をつけてほしいことがあるんだ」
「はい、なんでしょう……?」
「村岡さん、以前タナカユウキ様というお客様の予約を取った覚えはあるかな?」
「タナカユウキ様、ですか?」
私は瞬時に思考を巡らせ、タナカユウキ様の予約を思い出そうとする。