日本語が拙い外国人と恋仲になりました
『その会いたい人は、あなたの恋人ですか?』
『えっ』

 インタビュアーの問いに、ムラオカさんは目を見開いた。
 やめてくれよ。彼女には今、恋人はいないはずだ。こんなに綺麗で素敵な女性なのに、付き合っている相手がいないのはとても不思議だけれど。
 ムラオカさんは焦ったように首を横に振った。
 
『ち、違います。そんなんじゃありませんっ』

 ──ほらね、彼女自身が否定しているだろう?
 答えは分かっていたはずなのに、なぜか僕はものすごく安堵してしまった。
 残念そうな顔をしながらも、インタビュアーは更に続けた。

『ではあなたにとって、大切な人なのですね?』
『大切な人……』

 そう問われたムラオカさんは、また何かを考え込むようにうつむき加減になった。
 彼女が答える前に、インタビュアーはグイグイと質問をしていく。

『大切な相手でないと、わざわざ日本からここまで来ないですもんね~。よっぽどその方が好きなんですね?』
『そ、それは』

 ムラオカさんは珍しくどもり、上手く答えられていなかった。彼女がこれほどまでに困惑している姿を僕は一度も見たことがない。
 インタビュアーが言っていたこと。「大切な相手でないとわざわざ日本からここまで来ない」、この件に関しては頷ける。
 その人とはどんな関係なのだろう。よほど大切な相手なんだね?
 そう考えると、更に胸が締めつけられた。僕は、ムラオカさんのことを何も知らなかったんじゃないか。

『お相手とはどこで出会ったのですか?』

 目をキラキラさせて、インタビュアーはそう問いかけた。
 それに対して、ムラオカさんは遠慮がちにこう言ったんだ。

『……職場です』

 ん? 職場?

『日本の職場ということですね?』
『はい。そうです』
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