日本語が拙い外国人と恋仲になりました
 待て待て。職場って。あそこだよな。僕たちが働くシンバシホテルのことだよな? ムラオカさんはダブルワークはしていなかったと思うし。
 もしかしたら、その相手はホテルの仕事をすでに辞めたか、異動したかで僕が知らない人かもしれない。
 思考を巡らせるうちに、僕はもう一つの可能性を見出す。
 ……まさか。僕のこと、じゃないよな?
 意図せず胸が高鳴った。期待すべきじゃないのに、心のどこかで期待してしまう自分がいる。

『日本で出会って、中国で再会なんて素敵ですね! もうこちらでは会いましたか?』
『いえ、それがまだ……会えていないんです』
『そうですか。これからお会いするのですね! とても楽しみですね。大切な人と、素敵な時間を過ごしてください!』
『ああ、はい。ありがとうございます……』

 終始ムラオカさんは顔を強張らせていた。インタビュアーの勢いに任せた感じになっていたけれど、彼女のインタビューはそこで終わった。
 その後はすぐに別の観光客に切り替わり、他愛ない話が繰り広げられていた。
 でももう、僕の意識はテレビ画面には向いていなかった。
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