五つ子家庭教師は全員イケメン執事でした

第17話 まさかの男女混浴⁉五人の素顔にドキドキが止まらない

露天風呂へ向かう小道は、
月明かりと竹灯りが揺れていてまるで別世界だった。

美桜と一緒に湯気の立つ暖簾をくぐろうとした瞬間…

美桜が驚いた声を上げた。

「ちょっと待って! これ……混浴って書いてあるよ!?」

「えっ……うそ……!」

確かに、旅館の名物は混浴露天岩風呂。
時間帯が男女別だったはずなのに…
どうやら今日だけ貸切利用になっているらしい。

美桜がスマホを確認しながら言う。

「これ……誰かが事前に貸切予約してる……
まさか、あの五人?」

胸が高鳴った。

(そんな……もし五人と同時に入ることになったら……
どうしよう……)


湯気の向こうから現れたのは…

服を脱いでタオルを巻き、
湯気の中へそっと足を踏み入れた。

ぱしゃり。

岩の向こうから、水音。

そして
湯気を切って現れたのは、
濡れた髪をかき上げながらこちらを見る 長男・海斗 だった。

「お嬢様……」

月明かりに濡れた肩、
鎖骨を伝う水滴。

タオルを巻いたあやめは、瞬間的に固まる。

「か、海斗……なんで……」

「ここは貸切に頼んでおきました……お嬢様に何かあってはいけませんので」

そこへ次々と。

陽太
「おーい海斗! シャンプーどこ……って、お、お前ぇ!? あやめ!? なんでここに!?」


「え……混浴の時間に来てしまったんですね……」

蒼真
「……タオル、落ちそう。気をつけて」

優真
「わぁぁ……あやめちゃんの顔、真っ赤……」

湯気と月光に照らされた五人の姿は、
普段よりもずっと大人っぽくて、色っぽかった。

(だめ……目のやり場がない……!!)



「あ、あのっ! 私たち出るねっ!」

そう言って回れ右しようとした時…
ガラッ。

外から旅館スタッフの声がした。

「貸切時間、あと三十分延長入りましたー!」

陽太
「延長……?」

優真
「これって……一緒に入れってこと?」

あやめ
「ち、違うでしょ!?」

海斗は小さくため息をつきながらも、
どこか優しい目であやめを見つめた。

「……無理にとは言いません。ですが、せっかくの温泉です。
我々がいれば危険はありませんし……それに今ここはもっとも安全な場所です」

律も微笑む。

「少しだけ一緒に入ってくつろぎませんか?
のぼせないように僕たちが距離を取りますから」

蒼真
「……絶対に触れない。配慮する」

陽太
「変なことしねぇよ!! 早く入れよ体冷えちゃうだろ!」

(みんな……本当に優しい……)

そして、
あやめは小さくうなずいた。

「……じゃあ、少しだけ」

岩風呂の端にそっと浸かると、
温かいお湯がじんわり体を包んだ。

湯気の奥から歩いてくる五つ子は、
服を脱いだだけでまるで別の生き物のようだった。

特に海斗。

濡れた黒髪を後ろへ流し、
引き締まった鎖骨と肩のラインが月光に光る。
胸から腹筋にかけてのラインがきれいで、
水滴がひとつずつ滑り落ちていくたびに目が離せなくなる。

(海斗って……服の下、こんな体してたんだ……)

陽太はスポーツ系らしく、
逆三角形の背中と、鍛えた腕の筋肉がしっかり浮き上がっている。
腕を上げた時の二の腕の盛り上がりがまぶしい。

律は細身に見えて、意外と体のラインがきれい。
肩幅が広く、濡れた前髪を払う仕草が妙に色っぽい。

蒼真は無駄のない体つきで、
濡れた肌が白く光るように見えてドキッとする。
湯に肩まで沈めても、逆に色気が増すタイプだ。

優真は柔らかい印象の体つきなのに、
濡れた肩から胸元にかけて筋肉の線がよく見え、
普段より大人っぽくて思わず息をのむ。

さらに湯気が彼らの体を隠したり、
逆にふっと晴れて肌が露わになったりするたびに、
あやめは何度も心臓を押さえそうになった。

(こんなの……刺激が強すぎる……)

五人は約束通り距離を置いている……はずなのに

陽太が泳ぐように近づいてきた。

「お、おい陽太! 距離!」

「わ、わりぃ!! でもさぁ……こんなに綺麗だったっけ、お前……」

「へっ!? な、なに突然……!」

律が静かに笑う。

「分かりますよ。温泉は表情が柔らかく見えるんです」

優真がこっそり耳打ち。

「あやめちゃん……髪濡れてるの、なんか色っぽい……」

蒼真は湯の中で目をそらしながらつぶやいた。

「見ない方が……いい」

海斗だけが、落ち着いた声で言う。

「お嬢様、頬が赤いのはのぼせか、恥じらいか……
判断に迷いますね」

「や、やめてぇぇ……!!」

湯気と距離感と五つ子の視線が混じり合って、
自分でもよく分からないほどドキドキする。

こんなに心臓が早くなる温泉、聞いたことがない。


風がふわっと吹いた瞬間。

「きゃっ……!」

あやめのタオルが少しだけずれかけ
すかさず五人が、全員違う方向に視線をそらした。

海斗
「危険です。あまりにも美し過ぎる…」

陽太
「見てねぇ!! 絶対見てねぇからな!!」


「心配しなくても、見ていませんよ……ほんの少ししか」

優真
「やっ……律兄、言い方……!」

蒼真
「……タオル、押さえて」

顔が燃えるほど熱い。

でも、
どこかくすぐったくて、嬉しくて。

(この旅行……来てよかった……)


五人と過ごす温泉は、
安全で、優しくて、そして危険なほど甘かった。

どの視線もどの声も
少しずつ「執事」ではなく「一人の男」の温度を帯び始めている。

あやめは胸に手をあてる。

(私……この中の誰かを……好きになっちゃうのかな……)

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