五つ子家庭教師は全員イケメン執事でした

第16話 ほっと一息、温泉旅行へ。五人と一緒の初めての休日

不審者騒動の翌朝。
あやめがリビングに降りると、五人が勢ぞろいしていた。

「おはよう……みんな、早いね?」

次男・陽太がニッと笑う。

「だって今日は、お前の気分転換デーだからな!」

「あ、あの……気分転換デー?」

四男・律がやわらかく説明する。

「昨日のことがありましたからね。
みんなで何か楽しいことをしたくて……」

そこへ長男・海斗がスケジュール表を開いて、淡々と告げた。

「本日は学校の休暇日。
お嬢様の心身の回復を最優先し、全員で温泉旅行に行くことに決めました」

「お、温泉旅行……!?」

思わぬ提案にあやめは固まった。

五男・優真がうきうきしながら近づく。

「露天風呂付きのお宿〜! 夜は花火も見れるんだよ!」

三男・蒼真は無表情ながら、ほんの少し目の端が嬉しそう。

「荷物、もうまとめた。……あと、警備も完璧」

なんて有能なの……。



あやめがふと口にした。

「ねぇ……友達を一人だけ呼んでもいいかな……?
美桜って子なんだけど…女の子と話せたら落ち着くし……」

次男・陽太が即反応。

「お、おい。誰呼ぶんだよ?」

律は優しく微笑む。

「もちろん構いませんよ。
あやめさんの安心が第一ですから」

海斗も頷いた。

「旅館と部屋数は調整済みです。
追加の一名は問題ありません」

蒼真が短く言う。

「……その子の分も、安全確認しておく」

優真は手をたたいて喜ぶ。

「わぁ、楽しみが増えた〜!」

(……五人とも、ほんとに優しい……)

あやめはスマホを取り出し、
仲の良い友達・美桜にメッセージを送った。

『今日、温泉行かない?』

すぐに返信が来る。

『行く!!! 何それ楽しすぎ!!』

(良かった……)


出発の時間。五人のテンションが凄かった…

玄関でスーツケースを準備する五人。

陽太
「よしっ! 今日は絶対楽しませるからな!」


「お嬢様、車酔いしないようにお水も用意しました」

優真
「お菓子もいっぱい持ってきた〜!」

蒼真
「……後部座席、日差し入らないようにしておいた」

海斗
「安全運転で向かいます。ご安心を」

(なんだろう……旅行というより、修学旅行の引率みたい……)

そして車に乗り込むと、
美桜も途中でピックアップして参加。

「やば……何このイケメン集団……!!
あやめ、説明して!!」

「ちょ、あとで話すから!」

美桜の驚きで、車内はすぐに明るい空気になった。


温泉旅館へ到着…

大きな門をくぐると、
山の上にある落ち着いた和風旅館が姿を現した。

川の音、木の匂い、風の涼しさ
全部が心をほぐしてくれる。

「すごい……綺麗……!」

陽太があぐらをかきながら自慢げに言う。

「当然だろ。俺たちが選んだんだからな!」

律は穏やかに説明する。

「ここは露天風呂が三つもあって、お料理も有名なんですよ」

優真がくるっと回って、

「夜は手持ち花火しよ〜!」

蒼真がさりげなくあやめの肩へタオルを乗せる。

「風、冷たい。……気をつけて」

海斗はフロントでチェックインを済ませ、

「皆さま、荷物はこちらでお運びします」

完璧すぎる。

(ああ……やっと、ほのぼのな時間に戻れた……)

胸の奥にあたたかい空気が流れ込んでいく。



美桜
「ねぇねぇ! 露天風呂行こ!! あやめ!!」

あやめ
「う、うん……!」

五つ子はそれぞれ別行動のはずなのに、
なぜか露天風呂の近くで待機しているらしい(陽太情報)。

温泉の湯気に包まれながら、
あやめはふと思った。

(この旅行……絶対忘れないだろうな)
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