五つ子家庭教師は全員イケメン執事でした
第20話 旅館の夜。花火と五人の甘い時間
その日、旅館の近くを散歩したり一日リフレッシュし、
流石に夜は混浴ではなく美咲と二人で温泉に。
恋バナに花を咲かせ
あっという間に日が暮れた。
夕食を終え、旅館の庭に出ると、
川の音と涼しい夜風が心地よかった。
空には満天の星。
そして、スタッフが手持ち花火を配ってくれる。
「わぁ……すごい綺麗……!」
美桜と並んで感動していると、
背後から落ち着いた声がした。
「お嬢様、こちらを」
長男・海斗が火のついた花火をそっと差し出してきた。
湯上がりで結んだ髪から水滴が落ち、
浴衣の襟元から少しだけのぞく鎖骨が夜の光に照らされている。
「花火の火、意外と強いので……手元、貸してください」
手を添えられた瞬間、
火花よりも心臓が跳ねた。
「海斗……近い……」
「申し訳ありません。ですが……離れがたいですね」
かすかに目を細める海斗。
その優しい眼差しに、胸が熱くなる。
「おいあやめ! 花火貸せ!」
陽太が走ってきて、
勢いよく隣にしゃがみこんだ。
火花がパッと散るたび、
陽太の腕の筋肉が照らされてかっこいい。
「混浴の時も思ったけどさ……
お前、浴衣似合いすぎだろ。反則だからな」
「えっ!? なにそれ急に……」
「べ、別に褒めてねぇし! 言ってみただけだし!」
耳まで真っ赤。
なのに顔はずっとあやめを見ていた。
「……他の兄弟にそんな顔見せんなよ」
小さくつぶやいた声が、
火花にかき消されそうでまた切ない。
庭の端で線香花火をしていると、
いつの間にか三男・蒼真が隣にいた。
「……落とすよ。気をつけて」
そっと指先に触れる距離で支えてくれる。
静かで、落ち着いていて、
風がふれるたびに浴衣が揺れて色気が漂う。
「あの……蒼真も花火、好き?」
「……嫌いじゃない。
でも……誰とやるかで、ずいぶん変わる」
「え?」
蒼真は、ほとんど聞こえない声で言った。
「……あやめとやる花火なら、好き」
火花が落ちる瞬間、
指先が少し触れた気がして心臓が跳ねた。
庭の中央、灯籠の前。
「お嬢様。夜風に当たると浴衣の裾が冷えます。
よければ、こちらの羽織を」
四男・律がそっと羽織を肩に乗せてくれた。
近くで見ると、
律のまつげは長くて、
火の明かりで横顔が美しい。
「ありがとう、律……」
「ふふ。言葉だけでは足りませんよ?」
「えっ?」
「もう少し、こちらを向いてください」
顔を向けた瞬間、
律の指があやめの頬にそっと触れる。
「ほら……火花が映っていて、とても綺麗です」
心臓が静かに、でも強く鳴った。
最後の線香花火が落ちた頃、
五男・優真が後ろからそっと背中にくっついた。
「ねぇあやめちゃん……今日ね……
ずっと隣にいたかったの」
「え、優真……?」
優真はあやめの浴衣の袖を、そっとつまむ。
「混浴の時も……お部屋で話した時も……
ずっと、胸がどきどきしてた」
顔を上げると、
優真の瞳がまっすぐこちらを見ていた。
「お願い。今日の最後の花火……
ぼくと一緒に見てよ」
差し出された線香花火。
小さな火花が、二人の間で揺れる。
そして
優真がそっと言う。
「あやめちゃんが誰を好きになっても……
ぼくは、ずっとそばにいるよ」
その言葉は、
夜風よりも甘くて、
火花よりも胸に残った。
夜空に小さく光る花火。
それぞれの兄弟と交わした言葉が残り、
あやめの胸はどんどん苦しく、そして嬉しくなる。
(……どうしよう。
誰と一緒にいたいんだろう、私……)
流石に夜は混浴ではなく美咲と二人で温泉に。
恋バナに花を咲かせ
あっという間に日が暮れた。
夕食を終え、旅館の庭に出ると、
川の音と涼しい夜風が心地よかった。
空には満天の星。
そして、スタッフが手持ち花火を配ってくれる。
「わぁ……すごい綺麗……!」
美桜と並んで感動していると、
背後から落ち着いた声がした。
「お嬢様、こちらを」
長男・海斗が火のついた花火をそっと差し出してきた。
湯上がりで結んだ髪から水滴が落ち、
浴衣の襟元から少しだけのぞく鎖骨が夜の光に照らされている。
「花火の火、意外と強いので……手元、貸してください」
手を添えられた瞬間、
火花よりも心臓が跳ねた。
「海斗……近い……」
「申し訳ありません。ですが……離れがたいですね」
かすかに目を細める海斗。
その優しい眼差しに、胸が熱くなる。
「おいあやめ! 花火貸せ!」
陽太が走ってきて、
勢いよく隣にしゃがみこんだ。
火花がパッと散るたび、
陽太の腕の筋肉が照らされてかっこいい。
「混浴の時も思ったけどさ……
お前、浴衣似合いすぎだろ。反則だからな」
「えっ!? なにそれ急に……」
「べ、別に褒めてねぇし! 言ってみただけだし!」
耳まで真っ赤。
なのに顔はずっとあやめを見ていた。
「……他の兄弟にそんな顔見せんなよ」
小さくつぶやいた声が、
火花にかき消されそうでまた切ない。
庭の端で線香花火をしていると、
いつの間にか三男・蒼真が隣にいた。
「……落とすよ。気をつけて」
そっと指先に触れる距離で支えてくれる。
静かで、落ち着いていて、
風がふれるたびに浴衣が揺れて色気が漂う。
「あの……蒼真も花火、好き?」
「……嫌いじゃない。
でも……誰とやるかで、ずいぶん変わる」
「え?」
蒼真は、ほとんど聞こえない声で言った。
「……あやめとやる花火なら、好き」
火花が落ちる瞬間、
指先が少し触れた気がして心臓が跳ねた。
庭の中央、灯籠の前。
「お嬢様。夜風に当たると浴衣の裾が冷えます。
よければ、こちらの羽織を」
四男・律がそっと羽織を肩に乗せてくれた。
近くで見ると、
律のまつげは長くて、
火の明かりで横顔が美しい。
「ありがとう、律……」
「ふふ。言葉だけでは足りませんよ?」
「えっ?」
「もう少し、こちらを向いてください」
顔を向けた瞬間、
律の指があやめの頬にそっと触れる。
「ほら……火花が映っていて、とても綺麗です」
心臓が静かに、でも強く鳴った。
最後の線香花火が落ちた頃、
五男・優真が後ろからそっと背中にくっついた。
「ねぇあやめちゃん……今日ね……
ずっと隣にいたかったの」
「え、優真……?」
優真はあやめの浴衣の袖を、そっとつまむ。
「混浴の時も……お部屋で話した時も……
ずっと、胸がどきどきしてた」
顔を上げると、
優真の瞳がまっすぐこちらを見ていた。
「お願い。今日の最後の花火……
ぼくと一緒に見てよ」
差し出された線香花火。
小さな火花が、二人の間で揺れる。
そして
優真がそっと言う。
「あやめちゃんが誰を好きになっても……
ぼくは、ずっとそばにいるよ」
その言葉は、
夜風よりも甘くて、
火花よりも胸に残った。
夜空に小さく光る花火。
それぞれの兄弟と交わした言葉が残り、
あやめの胸はどんどん苦しく、そして嬉しくなる。
(……どうしよう。
誰と一緒にいたいんだろう、私……)