Naked Love〜涙の跡を舌で辿る時〜
私の『好き』と、悠久くんの『可愛い』が、何時か交わる可能性に何度縋った事か。

でも。

どんどん、格好良くなっていく悠久くん。
大人になっていって、眩しくて。
そして、私にはついていけない話題と、取り巻いている環境。
私だけ、取り残されている…そんな状態に次第にどんどん、私は焦りを感じ始めた。

だから…駆け引きの様な稚拙な考えを練って、自分から距離を空けてみようかなんて微妙な距離を作ってみたり、少しだけ態度を変える日を作ってみたり、学生特有の安易な考えでメイクを習ってみたり、髪のお手入れに力を入れてみたりと、何とかして悠久くんの気を引く為に作戦を試みた。

それでも、悠久くんは私のこの気持ちに向けて、初めて告白した時と変わり映えはせず。
ギリギリのラインで繋げていた、好きだと飽きる程告げ続けた私の心は、段々と翳りが出来て、限界が近い事を知らせた。

風の噂で、悠久くんに彼女が出来たと知った時は、この世の終わりかと言わんばかりにわんわん泣いたし、別れてしまったと知った時は、その弱みに付け込みたい程、自分に都合のいい存在になりたいと思い、その気持ちが自分でも酷く悪くて、最悪だと自己嫌悪に陥った。

でも…それでも優しい悠久くんは、心の何処かで、私の想いを全て掬ってくれると信じていたんだ…。

そう、何処かで。


そんな根拠ない気持ちで、ずっと隣の位置を…幼馴染というレッテルでもいいから、なんとかキープしていたかった、

でも、現実は甘くない。
何万回と数え切れない程に、私の想いを真っ向から受け止めて貰えない事に対して、ある日急にストンと気持ちが闇に落ちる。

高校を卒業して、卒なく大学受験も第一志望という難関を突破したある日。


息抜きにと、久しぶりに…。
昔、悠久くんに手を引かれてよくブランコに乗った、思い出の沢山ある公園へと足を運んでみることにした。

あの頃はとても広くて、冒険家にでもなれるような気がしていた公園は、今こうしてベンチに座ってみると、とても小さい。

だからこそ、楽しい思い出が凝縮されて、夢のような世界へと繋っていたのかもしれない。

あぁ…私はやっぱり、諦められないのかな…。
こんなにも好きな気持ちを捨てられる日は、永遠に来ないのかな…。

そんな事をつらつらと思い、それでもそれをお首にも出さず日々を送っていたある日。

私も歳を重ねて華の女子大生となり、もうそろそろ一年が経とうとしている。
子供という殻から半分だけ抜け出した状態で、ずっと温めていたこの感情に、そろそろケジメを付けなければと思い始めていた。

『希子ちゃんは、今日も元気で可愛いね…』

『大好き』に対しての揺るがなくて変わらぬアンサー。


初恋なんて忘れて、告白してくれた何人かの中の一人と、お付き合いをしようともしたけれど、結局悠久くんを忘れる事が出来ずに、断念。

それ所か、相手から見切りを付けられる始末。

余計に胸の中で燻ってしまう濃霧の様な、モヤモヤとした気持ちはどろり、どろりとこの心を蝕んでいく。
まだ、上手く気持ちを切り替えられずにもだもだして、やっぱりこの気持ちは止められないと、思った。

そんな矢先。


悠久くんは、私が卒業する一歩手前…二十歳になるという夏、忽然と私の目の前から姿を消した。


昨日まで確かに、普通に接していた筈なのに。
『希子ちゃん』と、確かに優しく名前を呼んでいてくれていたのに…。


人伝に聞いたそれを確かめるべく、急いで家を飛び出して、悠久くんの家へと向かった。

でも…理由は、悠久くんのママから、

『希子ちゃんが何か聞いてきても、何も言わなくていいって言われたけど…。あの子会社の人事で、ロンドンに行ったの。帰国が何時になるか迄はおばさんにも分からなくて…ごめんね』


と、だけ…。

気まずそうに言われた。


何がなんだか、如何してこうなったのか、頭が回らない。
頭が真っ白くなり、涙が溢れた。


喉元が熱くなって、上手く酸素が取り込めない。
そして、私は悠久くんのママの前で、過呼吸を起こしそのまま意識を手放した。

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