秘密な恋愛

すれ違った心

春休み旅行を間近に控えた、3月中旬。


​事故で一部の記憶を失ってから、
芽依がずっと胸の奥に溜め込んでいた
モヤモヤがあった。


​クラスの女子たちとの、何気ない
いつもの会話。


​「そういえばさ、去年の修学旅行で···」

​(修学旅行?)

​当然、事故前の記憶が欠けている芽依には
ピンとこない。


どこかぽかんとしている芽依の表情を見て、
友達がハッとしたように口元を押さえた。

​「あ、芽依ちゃん覚えてない···か。ごめんねっ!」

​気まずそうに笑い、慌てて話題を逸らそうとする友達。

​「えっ!? 私なら全然平気だよ?」


​そう言って笑顔を作ってみせるものの、
学校で友達と話していると、
どうしてもこんなやり取りが増えてしまっていた。


みんなが意図的に傷つけようとしているわけじゃない。
むしろ芽依を気遣ってくれているからこその
配慮なのだと分かっている。


けれど、そのたびに芽依は

“自分だけみんなと違う世界にいる”

ような、寂しさを感じずにはいられなかった。



​そして。
芽依の顔から少しずつ笑顔が減っていることに、佑陽が気づかないはずもなかった。
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