激重シスコン皇帝は、勝ち気な姫に陥落する

最悪の第一印象

二人の出会いは最悪だった。
少なくとも、
ルチアにとっては———

弟・デクランと婚約者ファティマの結婚式前日。
式に参列予定のVIP達が
続々とアズールティアの港に上陸する。
小さな島国のアズールティアに
こんなに大物がやってくることなんてまずない。

国民たちは
ひと目外国の王族たちの姿を見ようと
港に押し寄せていた。

アズールティアが迎える賓客の中でも
格の大きさではトップクラスの一人なのが
ドラゴニア帝国皇帝ビンセント。
新婦ファティマの実弟。
若き皇帝の初々しさがありつつ、
威厳たっぷり、
圧倒的なオーラを放つその姿は
さすが帝国の皇帝!
と感じさせるものだった。

彼がタラップを降りるまでは。


「姉上ーーーッ!!」
ズカズカッ!
周囲を気にすることなく、
一直線に姉に駆け寄る皇帝。

両腕を広げて突進し、
ファティマをぎゅっと抱きしめる。

「よかった……! 元気そうで……! ちゃんと食べてる? 寝てる? あのデクラン王子、乱暴してない? 不安にさせてない? 嫌なことあったらすぐ言ってね? 僕が迎えに──」

「ちょ、ちょっと落ち着いて、ビンセント……!」
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