激重シスコン皇帝は、勝ち気な姫に陥落する
「アズールティア……本当に無事だといいけど……」

震える声。
ルチアの指先が強く組まれているのを見て、
ビンセントはそっとその手を包んだ。

「大丈夫だ。俺の軍だ。必ず間に合う。必ず守る。」
いつもの強引さとは違う、
揺るぎない力強さ。

ルチアの目に涙が溜まり、
ビンセントの胸に額を押しつける。
「怖い……家族も、民も……みんな……」

ビンセントは抱き寄せ、
耳元で囁いた。
「泣くな。お前が泣いたら、俺まで胸が潰れそうになる。」

その夜。
予報よりずっと早く嵐が来た。

轟音。稲妻。
軍艦が軋み、甲板はびしょ濡れ。
怒涛のような波が船体を叩き、
兵士たちが慌ただしく動き回る。

ルチアは船室にいたが、
恐怖で震えていた。

その瞬間、扉が乱暴に開き、
ビンセントが入ってくる。

「ルチア!」

彼は濡れた鎧のまま駆け寄り、
ルチアを抱きしめた。
「外は危険だ。絶対にここから出るな。」

「ビンセント……! 無事なの?怪我してない?」

「してない。お前が無事ならそれでいい。」

その時、船が大きく揺れ、
ルチアは体勢を崩しビンセントの胸に倒れ込む。

ビンセントはそのまま
彼女の頬、耳、髪に触れ、囁く。
「怖いなら、ずっと抱いててやる。」

「……だ、抱かなくていいわよ……」

「強がらなくていい。体が震えてるだろ。」

そのままルチアを膝の上に抱き上げ、
毛布で包み、ゆっくり背中を撫でる。
「眠れるまで離れない。」

「こんな時に……甘やかしすぎよ……」

「こうでもしないと、お前の不安が消えないだろ。」

その声が優しくて、反則だった。
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