激重シスコン皇帝は、勝ち気な姫に陥落する
結婚式のゲスト達も続々と姿を現す。
当然、
新婦の弟(デクラン)と新郎の姉(ファティマ)も
お祝いに駆けつけた。

ビンセントとルチアの視線が
ある一点に集中する。
ファティマのドレスの腹部が、
ふっくらと丸みを帯びていたのだ。

「え、もしかして……!!」
ルチアの目が輝く。

ビンセントはというと、
今日は自分が主役なのに、
完全に“姉モード”に切り替わる。

「姉上。あちらに控室を用意しました。専用のソファ、専用の女医を三名待機させてあります。もし具合が悪くなられたら直ちに知らせ──」

「いやいや、落ち着いてビンセント。お気遣いは嬉しいけど……今日は君の結婚式だろう?」

「いえ、姉上の大切なお身体にもしものことがあったら大変だ。万が一に備えてエスコート班も5名配置しました。」
デクランの話などまるで耳に入らないのか、
ビンセントはファティマに喋り続ける。
「あ、姉上のお子が女の子なら……間違いなく、姉上の美貌と才能を受け継ぐに違いない。将来、私の息子の婚約者に──」

「ビンセント、ルチアが置いてけぼりよ?」
ファティマが苦笑いで弟を制する。
姉に言われて、ハッと我に返るビンセント。

「あっ……ル、ルチア!!」

ルチアはくすっと笑い、
手を差し出す。
「いいのよ、ファティマ。この人の姉バカぶりは今に始まったことじゃないんだから。それより、ほんとにおめでとう。」
ファティマは涙目で
ギュッとファティマを抱きしめる。
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