激重シスコン皇帝は、勝ち気な姫に陥落する
祝宴が終わり、静まり返った皇帝宮。
深夜の回廊には、
銀の燭台の炎が揺れている。

ビンセントがそっとルチアの手を取る。
昼間とは違う、
静かで凛とした空気。
けれど、その掌は僅かに震えていた。
——強いのに、
こんなところだけ不器用で愛しい。

「……怖がらなくていい。今日は、ただお前と一緒にいたい。」

低く掠れた声に、ルチアの胸が跳ねる。
彼はゆっくりと、
でも確かに、
花嫁を自分の私室へと導いた。

扉が閉まった瞬間。
外界から音が完全に断ち切られ、
二人だけの世界が始まる。

ビンセントは緊張したように息を吸い、
それから、ルチアの頬に触れた。
まるで壊れ物を扱うみたいに丁寧に。

「……本当に、私でいいの?」
小さく震えるルチアの声。

ビンセントはためらわず抱き寄せた。
彼の胸板に触れた瞬間、
心臓の鼓動がはっきり伝わる。
それは、まるで彼が言葉よりも早く
“愛している”と叫んでいるみたいだった。

「お前じゃなきゃ、駄目なんだ。」
< 95 / 111 >

この作品をシェア

pagetop