激重シスコン皇帝は、勝ち気な姫に陥落する
その囁きで、
ルチアの膝から力が抜ける。
彼はゆっくりと、
長い時間をかけるみたいに
額、頬、こめかみ——
決して急がずに“触れたい場所”を確かめていく。

唇が重なるのは、
すぐじゃなかった。

焦らすように、
確かめるように、
呼吸が触れ合う距離で、
何度も彼女の名を呼ぶ。

「ルチア……」

その声だけで、
まるで全身が抱きしめられているみたいだった。

ついに落ちてきた唇は、
思っていたより優しくて、
でも触れた途端に
胸が跳ね上がるほど熱い。

ビンセントは囁く。

「今日は急がない。お前の呼吸も、鼓動も、全部……俺に教えてほしい。」

2人は炎の明かりに照らされながら、
まるで長い航海の果てに
ようやく辿り着いた“帰る場所”を
確かめるように寄り添う。

夜はゆっくりと更けていく。
外の世界は眠り、
帝国の中心でただ一つ、
甘く熱い物語だけが静かに続いていた——。

< 96 / 111 >

この作品をシェア

pagetop