気まぐれヒーロー3


倉庫じゃない。

緑に囲まれた、静かな場所。


深緑をまとった木々が立ち並び、枝葉がつくる木陰が地面に涼しげに伸びている。

生い茂る緑のおかげか、空気はひんやり澄んでいて、吸い込むたびに都会で(すす)けた肺が洗われていくようだった。

木立の向こうには、例の倉庫の屋根がちらりと見える。
ここは、倉庫からそう遠くはないらしい。

飛野さんたちの後ろを歩いていくと……視界がぱっと開けた。

そこにあったのは、深い青色のバスケットコート。

両端にはバスケットゴール。


そして、コートの周りでは十数人の少年たちが大声で笑いながら騒いでいた。

みんな派手で、どこかヤンキーっぽい。


その視線をひとり占めにしているのは──


バスケットボールを弾ませ、コートを駆け抜ける一人の少年。


朝日を浴び、光のなかで圧倒的な存在感を放つ。



「ハイジ……」



緑のアイツ。



「おー、やってるやってる」

「朝からトバすね~」



飛野さんは顔を綻ばせ、タイガはあくびをしながら数メートル先の光景を眺めている。

私は……ただ、あの目立つ緑頭から目を離せなかった。

くすんだオレンジ色のボールを手に、風を切って走るハイジ。
行く手を塞ぐ少年たちの間を、素早くすり抜け──


地を蹴って、跳んだ。


放たれたボールは当然のようにリングへ吸い込まれ、ネットを揺らして落ちていく。

一瞬の出来事だった。


速い。


感想を言うなら、それだけ。


ベンチに座ってたり、コートのそばで地べたに腰を下ろして観戦していた少年達から、歓声が巻き起こる。
さっきとは違い、わっと膨れ上がった。

ハイジは無邪気な笑みでそれに応え、ゴール下に転がっているボールを拾って──ふと、顔を上げた。


その視線が流され、ある一点で止まる。

黒い瞳がまっすぐ見つめてくるのは……私。

私も、ハイジを見ていたから。
目が合うのは当然のこと。


ハイジの顔からは笑みが消え、ボールを持ったまま動かない。


“なんでお前がここに”


言葉にしなくても、アイツの目がそう問いただしてきた。



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