マジックアワー
瞬・大学時代
 ◇◇◇

  「おっ、よお裏口」
  瞬を見つけるなり、佐藤勇人(はやと)が右手をあげる。瞬は、不真面目で、授業は欠席、テストもいつも追試、単位落としまくり、そのくせ女の子とは遊びまくり、クラブ入り浸りで、四年になっても一年の授業の再履修を受けることになった。厳密にいえば再再再履修ということになる。それで、お前ほんとに医大受かったのかよ、裏口入学なんじゃねぇの、と勇人にいじられ、それから勇人は瞬をいじるときに「裏口くん」って呼ぶ。許せない。だって勇人も再再再履修だから。
  教室で、一年の授業を四年生の2人が仲良く並んで受ける。この授業の単位を落とすと、次はいよいよ留年である。
  「留年したら、大学出たとき25か〜、大丈夫かいな」
  「大丈夫だろ、医大だったら二浪三浪ざらにいるし。まあ30までに卒業できればよくね」
  「お前はいいよそれで、どうせ研修医何年かやったら親父さんの病院で働くんだろ。私立病院で高い給料もらって、いずれ医院長になるんだろ。成瀬医院長っ」
  「うるさい」
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