危険すぎる恋に、落ちてしまいました。番外編
番外編1.バレンタイン争奪戦
二月十四日。
澄んだ冬の空気の中、風がピンク色の気配を運んでくる。
黒薔薇学園にとって、この日は“特別”だ。
――文化祭と同じ熱量で暴走するバレンタインデー。
だが、その熱量を知らない少女が一人。
雨宮美羽は、手作りチョコが入った紙袋を抱えて、るんるんと登校していた。
「わぁ……今日、渡せるんだ……。ちゃんとしたシチュで渡したいし、心の準備も必要だし……きゃぁ、恥ずかしい!」
梅のつぼみが色づき始めた校門前には、特別な想いを抱える生徒たちの視線がちらつく。
そのことに気づかず、美羽は白い息を弾ませた。
「よし、がんばろ……!」
そう呟きながら、椿に“寝坊したから先に行ってて”とメールを送り、早歩きで校舎へ向かう。
――しかしその頃、生徒会室では修羅場が準備されていた。
*
「会長ー!ミッションA地点には網を仕掛けてきたよっ!」
悠真がVサインで飛び込む。
「ミッションB地点には接着剤を塗布済みです。効果は抜群かと。」
碧は敬礼し、なぜか誇らしげだった。
「椿~、ミッションC地点は“宝探し”の名目で椿のブロマイドを大量にまき散らしておいたよ~。」
遼がひらひらと写真を扇ぐ。
そこには椿の不本意すぎるイケメンショットが。
椿は眉をぴくつかせた。
「お前……どこからそんな写真調達してんだよ。」
「ふっ。俺を誰だと思ってる?」
さらりと答える遼を無視しながら、玲央が眼鏡を押し上げる。
「監視カメラの映像をハッキングして、椿会長の寝顔ベストショットを厳選しました。」
「おい待て玲央、それストーカーの域だろっ!」
全員が涼しい顔で作戦を続ける中、椿だけが引き気味だ。
悠真が手をあげた。
「てか椿~?美羽ちゃん、今日遅れてくるっていってたけど……このイベントのこと、説明したよね?」
「ああ?面倒だから、黒薔薇専用の裏ルートから来いって教えただけだ。」
「いや説明不足ぅぅぅ!!」
悠真は頭を抱えてぐるぐる回る。
碧は腕を組んでうなる。
「美羽さん、負けず嫌いなところがあるので……予想以上に突っ走る可能性もありますね。」
玲央が淡々と言葉を重ねる。
「これは“椿会長の説明能力不足”の可能性が高いと判断する。」
遼も頷く。
「まぁ、それは置いといて、てか普通に正門から来たらなんか問題あんの?」
悠真が食い気味に叫んだ。
「え!?遼、知らないの!?」
「……はぁ?」
「美羽ちゃん、“戦血姫”の異名がついてから、ギャップ人気でファンクラブができたんだよ!?
女子が椿を狙ってる間、男子は美羽ちゃん狙い!!危険すぎるでしょーがっ!!」
遼は絶句したあと、ニヤリとする。
「へぇ~、やっぱり俺が目を付けるだけあるわ。美羽ちゃん、モテるよねぇ。」
椿の手がぴくりと止まった。
「…………ちょっと待て、ファンクラブ“まで”あるとか聞いてねぇぞ?」
玲央が静かに言った。
「これは……極めてまずい状況だな。」
椿の眉間に深いシワが刻まれる。
そのとき、美羽からの“着信”が鳴った。
椿は瞬時に出る。
澄んだ冬の空気の中、風がピンク色の気配を運んでくる。
黒薔薇学園にとって、この日は“特別”だ。
――文化祭と同じ熱量で暴走するバレンタインデー。
だが、その熱量を知らない少女が一人。
雨宮美羽は、手作りチョコが入った紙袋を抱えて、るんるんと登校していた。
「わぁ……今日、渡せるんだ……。ちゃんとしたシチュで渡したいし、心の準備も必要だし……きゃぁ、恥ずかしい!」
梅のつぼみが色づき始めた校門前には、特別な想いを抱える生徒たちの視線がちらつく。
そのことに気づかず、美羽は白い息を弾ませた。
「よし、がんばろ……!」
そう呟きながら、椿に“寝坊したから先に行ってて”とメールを送り、早歩きで校舎へ向かう。
――しかしその頃、生徒会室では修羅場が準備されていた。
*
「会長ー!ミッションA地点には網を仕掛けてきたよっ!」
悠真がVサインで飛び込む。
「ミッションB地点には接着剤を塗布済みです。効果は抜群かと。」
碧は敬礼し、なぜか誇らしげだった。
「椿~、ミッションC地点は“宝探し”の名目で椿のブロマイドを大量にまき散らしておいたよ~。」
遼がひらひらと写真を扇ぐ。
そこには椿の不本意すぎるイケメンショットが。
椿は眉をぴくつかせた。
「お前……どこからそんな写真調達してんだよ。」
「ふっ。俺を誰だと思ってる?」
さらりと答える遼を無視しながら、玲央が眼鏡を押し上げる。
「監視カメラの映像をハッキングして、椿会長の寝顔ベストショットを厳選しました。」
「おい待て玲央、それストーカーの域だろっ!」
全員が涼しい顔で作戦を続ける中、椿だけが引き気味だ。
悠真が手をあげた。
「てか椿~?美羽ちゃん、今日遅れてくるっていってたけど……このイベントのこと、説明したよね?」
「ああ?面倒だから、黒薔薇専用の裏ルートから来いって教えただけだ。」
「いや説明不足ぅぅぅ!!」
悠真は頭を抱えてぐるぐる回る。
碧は腕を組んでうなる。
「美羽さん、負けず嫌いなところがあるので……予想以上に突っ走る可能性もありますね。」
玲央が淡々と言葉を重ねる。
「これは“椿会長の説明能力不足”の可能性が高いと判断する。」
遼も頷く。
「まぁ、それは置いといて、てか普通に正門から来たらなんか問題あんの?」
悠真が食い気味に叫んだ。
「え!?遼、知らないの!?」
「……はぁ?」
「美羽ちゃん、“戦血姫”の異名がついてから、ギャップ人気でファンクラブができたんだよ!?
女子が椿を狙ってる間、男子は美羽ちゃん狙い!!危険すぎるでしょーがっ!!」
遼は絶句したあと、ニヤリとする。
「へぇ~、やっぱり俺が目を付けるだけあるわ。美羽ちゃん、モテるよねぇ。」
椿の手がぴくりと止まった。
「…………ちょっと待て、ファンクラブ“まで”あるとか聞いてねぇぞ?」
玲央が静かに言った。
「これは……極めてまずい状況だな。」
椿の眉間に深いシワが刻まれる。
そのとき、美羽からの“着信”が鳴った。
椿は瞬時に出る。