欠けていく世界で、きみの光を見つけた
——やっぱり、来なければよかった。

そう後悔したのは、部屋を出てからあっという間のことだった。

「先生に見つかるかもしれないから、早く抜けよ!」

部屋を出てすぐの廊下で、ひまりが小さく声を弾ませて振り返る。

次の瞬間、ふたりは「せーの」と小さく声を合わせて、まるで忍者みたいに廊下を駆け出した。

「え、待っ……」

呼び止める間もなく、背中がすっと遠ざかっていく。

ついていかなきゃ、と反射的に動こうとした足は、恐怖によって止められた。

廊下の先は、今にも襲いかかってきそうな暗闇が広がっている。

消灯時刻を過ぎた廊下には、足元を照らす小さな夜間灯がぽつぽつと並んでいたけれど、その頼りないオレンジ色の光は、少し先へ行くだけですぐ闇に飲まれてしまっていた。

慌ててポケットに手を入れてスマホの存在を確かめる。

固い感触に一瞬安心したけれど、スマホを持っていることは、ふたりにも言っていないから、ここで簡単に取り出すこともできなかった。

ぎゅっと唇を噛み締め、一歩ずつ、確かめるように足を出す。

けれど、震える足は思うように前に進んではくれなかった。

急がなきゃって思うのに。
ここにこんなにも長くいたら、先生に見つかっちゃうって分かるのに。

ただの廊下なのに、どこが安全なのか分からない。

——怖い。

震え出す足に耐えられず、私はその場にしゃがみ込んで、ぎゅっと手首を握った。

やっぱり、来るべきじゃなかった。
遅すぎる後悔に涙がこぼれ落ちる。

息が浅くなって、うまく立っていられなかった。

「——おい」

血の気が引いていく中、すぐ近くで低い声がして、ふっと意識が戻される。

ハッと顔を上げると、目の前に人影がしゃがみ込んだ。

輪郭すらはっきりしない真っ黒な影に、思わず体が引いて、私はそのまま尻餅をつきそうになる。

「っ——」

痛みを覚悟した瞬間、その腕をぎゅっと掴まれて、あたたかな手のひらが私の体を支えた。
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