欠けていく世界で、きみの光を見つけた
少し腰をかがめて、塀から見えないように前を行く泰ちゃん。

それでもしっかりと手を握ってくれていて、初めて両親に背を向けたことにドキドキしながらも、なんだか心のどこかでワクワクしている自分がいた。

住宅街を抜けて、泰ちゃんの家の前を通る。

言いつけを破ると言っても、目的地はそこからほんの一、二分にある近所の小さな公園。

たったそれだけなのに、心臓の音がうるさい。

見られてないかな。バレてないかな。

そんな落ち着かない気持ちのまま、私たちは暗い公園に入った。

泰ちゃんに導かれるままベンチに腰を下ろすと、周りはほとんど闇だった。

街灯の光も、ここまでは届かなくてほんの少し、不安になる。

私をベンチに座らせたまま、公園の至る所で泰ちゃんはシャッターを切っていた。

「うん」

何枚か撮ったあと、納得したような声が聞こえてきたと思ったら、泰ちゃんはベンチまで走って戻ってきた。

隣に座り、カメラを私に手渡す。

視線を下ろした液晶には、画面いっぱいに、星が広がっていた。

無数の光の中には、連なっているもの、強く光るもの、淡く滲むもの。

黒い空の中に、たくさんの星が静かに散らばっている。

「すっごい……こんなに変わるの?」

思わず声が漏れる。
さっき見た写真と、全然違う。

「すごいだろ。研修もカメラ持っていけばよかったな」

少し悔しそうに言う泰ちゃんに、私は首を振った。

「ううん。十分だよ、ありがとう」

真っ暗な空が。
今までだったら襲いかかってくるような恐怖を抱いていた空が。

急にとても、美しいものに思えた。

ーーやっぱり、幸せだ。

泰ちゃんの隣にいる時間を、静かに噛みしめる。

陸の、門限を破ってしまう気持ちが、少しだけ分かった気がした。

怒られてばかりの陸を見て、私はずっと、心のどこかで思っていた。

なんで何回も同じことで怒られてるんだろうって。守ればいいのにって。

陸がいつも、こんな風に素敵な時間を友達と過ごしてるんだとしたらね。

やっぱり、私は陸が羨ましいよ。

私ばっかり優しくされてって、陸は怒ってたけど。

私は、そんな陸が、羨ましいんだよ。

さっきの陸の寂しそうな表情を思い出して、この気持ちはきっと陸に伝えるべきなんだと、心の奥が固まっていく。

「泰ちゃん、ありがとう」

私は、自分から泰ちゃんの手を握った。

暗闇から助けてもらうためじゃなくて、まっすぐな思いを伝えるために。

——ありがとう。

知ることのできなかったはずの、新しい世界を教えてくれて。

きっと普通じゃない私に、それでも幸せだって思わせてくれて。

何も、言葉にすることはできなかったけれど、泰ちゃんは、そのあたたかい手のひらで、ぎゅっと握り返してくれた。
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