過去で君に恋をした~32歳で死ぬ君を救うために
第12章 約束の貝殻
次の日、凛は悠真と秘密基地で会った。
最後の日だと、凛は感じていた。
もう、戻らなければいけない。
「凛ちゃん」
悠真が、ポケットから何かを取り出した。
小さな貝殻。
白くて、きれいな貝殻。
以前、秘密基地で見せてくれた、あの貝殻だ。
「これ、凛ちゃんにあげる」
悠真は、貝殻を凛に差し出した。
凛は、驚いた。
「でも、これ、悠真くんの宝物じゃ……」
「うん。だから、凛ちゃんにあげるんだ」
悠真は、真剣な顔で言った。
「凛ちゃんは、特別だから」
凛は、貝殻を受け取った。
手のひらに乗る、小さな貝殻。
光にかざすと、虹色に光る。
「僕、思ったんだ」
悠真は、凛を見つめた。
「凛ちゃんなら、未来で何かできると思うから」
凛は、胸が詰まった。
「僕を救ってくれるって、信じてる」
悠真は、笑顔で言った。
「だから、この貝殻、お守りにして」
凛は、貝殻を握りしめた。
涙が、溢れてきた。
「ありがとう……」
凛の声は、震えていた。
「凛ちゃん、泣いてるの?」
悠真が、心配そうに凛の顔を覗き込んだ。
凛は、涙を拭いた。
「ううん。嬉しくて、泣いちゃっただけ」
凛は、笑顔を作った。
「こんな大切なもの、もらっちゃって」
悠真は、安心したように笑った。
「大事にしてね」
「うん」
凛は、貝殻を胸に抱いた。
「絶対、守る。約束する」
悠真は、首を傾げた。
「守るって?」
「この貝殻を、大事にするってこと」
凛は、誤魔化すように言った。
でも、心の中では、別の約束をしていた。
あなたを守る。
あなたの未来を守る。
この貝殻とともに、その約束を守る。
「凛ちゃん」
悠真が、また話しかけた。
「ずっと、友達でいてくれる?」
凛は、頷いた。
「うん。ずっと、友達だよ」
悠真は、嬉しそうに笑った。
「よかった」
凛は、悠真を抱きしめた。
「ありがとう、悠真くん」
「どういたしまして」
悠真も、凛を抱き返した。
凛は、目を閉じた。
この温もりを、忘れない。
この優しさを、忘れない。
必ず、あなたを救う。
凛は、心に誓った。
凛は、悠真と秘密基地を出た。
もう、時間だ。
戻らなければいけない。
「じゃあ、また明日ね」
悠真が、笑顔で言った。
凛は、何も言えなかった。
明日は、ない。
もう、会えない。
「凛ちゃん?」
悠真が、不思議そうに凛を見た。
凛は、笑顔を作った。
「うん。また明日」
嘘だ。
でも、そう言うしかない。
「バイバイ」
悠真は、手を振った。
凛も、手を振った。
悠真は、走って行った。
その背中が、だんだん小さくなっていく。
凛は、涙が溢れてくるのを感じた。
止められない。
涙が、頬を伝う。
「さよなら……」
凛は、小さく呟いた。
悠真には、聞こえない。
でも、凛は言った。
「さよなら、悠真くん」
悠真の姿が、見えなくなった。
凛は、その場にしゃがみ込んだ。
貝殻を握りしめる。
涙が、止まらない。
別れたくない。
でも、戻らなきゃいけない。
凛は、立ち上がった。
涙を拭く。
家に帰ろう。
現代に、戻ろう。
凛は、歩き始めた。
夕日が、凛を照らしている。
茜色の光。
凛の影が、長く伸びている。
凛は、空を見上げた。
悠真、ありがとう。
心の中で、呟いた。
あなたのこと、絶対に忘れない。
そして、必ず救う。
約束は、守る。
凛は、前を向いた。
家が、見えてきた。
あそこに、戻る方法があるはずだ。
凛は、家に向かって歩いた。
貝殻を握りしめたまま。
涙は、もう止まっていた。
でも、心の中には、悠真への想いが溢れていた。
さよなら。
でも、これは終わりじゃない。
始まりなんだ。
あなたを救うための、始まり。
凛は、そう自分に言い聞かせた。
凛は、家に着いた。
子供の頃の家。
玄関を開けて、中に入る。
誰もいない。
静かだ。
凛は、自分の部屋に向かった。
ドアを開ける。
部屋の中を見渡す。
小さな机。
本棚。
ぬいぐるみ。
そして、机の引き出し。
凛は、その引き出しを見つめた。
引き出しが、光っている。
淡い光。
でも、確かに光っている。
「戻る時が来た……」
凛は、呟いた。
心の準備は、できている。
凛は、机に近づいた。
引き出しの前に、しゃがむ。
手を伸ばす。
でも、一瞬、躊躇した。
本当に、戻っていいのか。
悠真と、もう会えなくなる。
この幸せな時間が、終わる。
凛は、目を閉じた。
悠真の顔が、浮かぶ。
笑顔。
優しい目。
「凛ちゃんなら、未来で何かできると思うから」
悠真の言葉が、耳に響く。
凛は、目を開けた。
迷ってる場合じゃない。
悠真を救うために、戻るんだ。
凛は、引き出しに手をかけた。
ゆっくりと、引く。
引き出しが、開いていく。
その瞬間、眩い光が溢れ出た。
凛は、目を細めた。
まぶしい。
光が、部屋中に広がる。
凛の体が、浮いた。
また、あの感覚。
重力がなくなる。
光に、吸い込まれていく。
凛は、悠真の顔を思い浮かべた。
ありがとう。
さよなら。
でも、また会おう。
未来で、会おう。
凛の体は、完全に光に包まれた。
そして、視界が真っ白になった。
凛は、目を開けた。
天井が見える。
白い天井。
自分の部屋の天井だ。
凛は、体を起こした。
大人の体。
手を見る。
大きな手。
子供の手じゃない。
凛は、部屋を見回した。
自分の部屋。
ワンルームマンション。
現代に、戻ってきた。
凛は、立ち上がった。
机を見る。
引き出しは、普通の引き出しだ。
光っていない。
凛は、カレンダーを見た。
1週間後の日付。
本当に、1週間経っている。
凛は、スマホを手に取った。
画面を点ける。
通知が、たくさん入っている。
メールを開く。
差出人不明のメール。
件名:「業務引き継ぎ」
凛は、そのメールを開いた。
「1週間の代理業務、無事完了しました。以下、引き継ぎ事項です」
本文の下には、詳細な業務報告が記載されている。
「月曜日:出社。メールチェック。営業部との会議」
「火曜日:SNSモニタリング。批判コメントへの対応完了」
「水曜日:田中部長との面談。次回プロモーション企画について協議」
全部、完璧だ。
まるで、本当に凛が働いていたかのように。
凛は、さらにスクロールした。
「木曜日:記者会見準備。資料作成」
「金曜日:記者会見実施。無事終了。田中部長より高評価」
凛は、息を呑んだ。
記者会見も、やってくれたのか。
「土曜日・日曜日:休日。十分な休養を取りました」
「本日より、通常業務に復帰可能です。お疲れ様でした」
凛は、スマホを置いた。
信じられない。
本当に、誰かが代わりに働いていたんだ。
凛は、ソファに座った。
頭の中が、混乱している。
過去に行った。
悠真に会った。
そして、戻ってきた。
全部、本当だったんだ。
凛は、ポケットに手を入れた。
何か、硬いものが触れる。
取り出してみる。
貝殻。
悠真がくれた、貝殻。
凛は、貝殻を見つめた。
光にかざすと、虹色に光る。
これは、夢じゃない。
本当に、あったことなんだ。
凛は、貝殻を握りしめた。
悠真。
私、戻ってきたよ。
約束、守るから。
凛は、立ち上がった。
洗面所に向かう。
鏡の前に立つ。
鏡に映る自分。
大人の顔。
疲れた顔。
でも、目には、強い意志が宿っている。
凛は、貝殻を握りしめた。
「悠真を救う」
凛は、鏡に映る自分に向かって言った。
「もう、引き返せない」
凛の声は、はっきりしていた。
迷いは、ない。
「あの報告書のこと、ちゃんと調べる」
凛は、さらに続けた。
「メディアジールの副作用を、明らかにする」
凛の目に、強い光が宿った。
決意の光。
「会社と戦ってでも、真実を明らかにする」
凛は、貝殻を胸に当てた。
「約束は、守る」
凛は、深呼吸をした。
もう、戻れない。
第一のドアウェイを、通過した。
これからは、前に進むだけ。
悠真を救うために。
真実を明らかにするために。
凛は、鏡から目を離した。
部屋に戻り、スマホを手に取る。
明日から、また会社に行く。
でも、もう以前の凛じゃない。
戦う覚悟ができた、凛だ。
凛は、貝殻をそっと机の上に置いた。
この貝殻が、凛の支えになる。
悠真との約束の証。
凛は、窓の外を見た。
夜の街。
街灯が、点々と光っている。
凛は、静かに微笑んだ。
始まるんだ。
今から。
最後の日だと、凛は感じていた。
もう、戻らなければいけない。
「凛ちゃん」
悠真が、ポケットから何かを取り出した。
小さな貝殻。
白くて、きれいな貝殻。
以前、秘密基地で見せてくれた、あの貝殻だ。
「これ、凛ちゃんにあげる」
悠真は、貝殻を凛に差し出した。
凛は、驚いた。
「でも、これ、悠真くんの宝物じゃ……」
「うん。だから、凛ちゃんにあげるんだ」
悠真は、真剣な顔で言った。
「凛ちゃんは、特別だから」
凛は、貝殻を受け取った。
手のひらに乗る、小さな貝殻。
光にかざすと、虹色に光る。
「僕、思ったんだ」
悠真は、凛を見つめた。
「凛ちゃんなら、未来で何かできると思うから」
凛は、胸が詰まった。
「僕を救ってくれるって、信じてる」
悠真は、笑顔で言った。
「だから、この貝殻、お守りにして」
凛は、貝殻を握りしめた。
涙が、溢れてきた。
「ありがとう……」
凛の声は、震えていた。
「凛ちゃん、泣いてるの?」
悠真が、心配そうに凛の顔を覗き込んだ。
凛は、涙を拭いた。
「ううん。嬉しくて、泣いちゃっただけ」
凛は、笑顔を作った。
「こんな大切なもの、もらっちゃって」
悠真は、安心したように笑った。
「大事にしてね」
「うん」
凛は、貝殻を胸に抱いた。
「絶対、守る。約束する」
悠真は、首を傾げた。
「守るって?」
「この貝殻を、大事にするってこと」
凛は、誤魔化すように言った。
でも、心の中では、別の約束をしていた。
あなたを守る。
あなたの未来を守る。
この貝殻とともに、その約束を守る。
「凛ちゃん」
悠真が、また話しかけた。
「ずっと、友達でいてくれる?」
凛は、頷いた。
「うん。ずっと、友達だよ」
悠真は、嬉しそうに笑った。
「よかった」
凛は、悠真を抱きしめた。
「ありがとう、悠真くん」
「どういたしまして」
悠真も、凛を抱き返した。
凛は、目を閉じた。
この温もりを、忘れない。
この優しさを、忘れない。
必ず、あなたを救う。
凛は、心に誓った。
凛は、悠真と秘密基地を出た。
もう、時間だ。
戻らなければいけない。
「じゃあ、また明日ね」
悠真が、笑顔で言った。
凛は、何も言えなかった。
明日は、ない。
もう、会えない。
「凛ちゃん?」
悠真が、不思議そうに凛を見た。
凛は、笑顔を作った。
「うん。また明日」
嘘だ。
でも、そう言うしかない。
「バイバイ」
悠真は、手を振った。
凛も、手を振った。
悠真は、走って行った。
その背中が、だんだん小さくなっていく。
凛は、涙が溢れてくるのを感じた。
止められない。
涙が、頬を伝う。
「さよなら……」
凛は、小さく呟いた。
悠真には、聞こえない。
でも、凛は言った。
「さよなら、悠真くん」
悠真の姿が、見えなくなった。
凛は、その場にしゃがみ込んだ。
貝殻を握りしめる。
涙が、止まらない。
別れたくない。
でも、戻らなきゃいけない。
凛は、立ち上がった。
涙を拭く。
家に帰ろう。
現代に、戻ろう。
凛は、歩き始めた。
夕日が、凛を照らしている。
茜色の光。
凛の影が、長く伸びている。
凛は、空を見上げた。
悠真、ありがとう。
心の中で、呟いた。
あなたのこと、絶対に忘れない。
そして、必ず救う。
約束は、守る。
凛は、前を向いた。
家が、見えてきた。
あそこに、戻る方法があるはずだ。
凛は、家に向かって歩いた。
貝殻を握りしめたまま。
涙は、もう止まっていた。
でも、心の中には、悠真への想いが溢れていた。
さよなら。
でも、これは終わりじゃない。
始まりなんだ。
あなたを救うための、始まり。
凛は、そう自分に言い聞かせた。
凛は、家に着いた。
子供の頃の家。
玄関を開けて、中に入る。
誰もいない。
静かだ。
凛は、自分の部屋に向かった。
ドアを開ける。
部屋の中を見渡す。
小さな机。
本棚。
ぬいぐるみ。
そして、机の引き出し。
凛は、その引き出しを見つめた。
引き出しが、光っている。
淡い光。
でも、確かに光っている。
「戻る時が来た……」
凛は、呟いた。
心の準備は、できている。
凛は、机に近づいた。
引き出しの前に、しゃがむ。
手を伸ばす。
でも、一瞬、躊躇した。
本当に、戻っていいのか。
悠真と、もう会えなくなる。
この幸せな時間が、終わる。
凛は、目を閉じた。
悠真の顔が、浮かぶ。
笑顔。
優しい目。
「凛ちゃんなら、未来で何かできると思うから」
悠真の言葉が、耳に響く。
凛は、目を開けた。
迷ってる場合じゃない。
悠真を救うために、戻るんだ。
凛は、引き出しに手をかけた。
ゆっくりと、引く。
引き出しが、開いていく。
その瞬間、眩い光が溢れ出た。
凛は、目を細めた。
まぶしい。
光が、部屋中に広がる。
凛の体が、浮いた。
また、あの感覚。
重力がなくなる。
光に、吸い込まれていく。
凛は、悠真の顔を思い浮かべた。
ありがとう。
さよなら。
でも、また会おう。
未来で、会おう。
凛の体は、完全に光に包まれた。
そして、視界が真っ白になった。
凛は、目を開けた。
天井が見える。
白い天井。
自分の部屋の天井だ。
凛は、体を起こした。
大人の体。
手を見る。
大きな手。
子供の手じゃない。
凛は、部屋を見回した。
自分の部屋。
ワンルームマンション。
現代に、戻ってきた。
凛は、立ち上がった。
机を見る。
引き出しは、普通の引き出しだ。
光っていない。
凛は、カレンダーを見た。
1週間後の日付。
本当に、1週間経っている。
凛は、スマホを手に取った。
画面を点ける。
通知が、たくさん入っている。
メールを開く。
差出人不明のメール。
件名:「業務引き継ぎ」
凛は、そのメールを開いた。
「1週間の代理業務、無事完了しました。以下、引き継ぎ事項です」
本文の下には、詳細な業務報告が記載されている。
「月曜日:出社。メールチェック。営業部との会議」
「火曜日:SNSモニタリング。批判コメントへの対応完了」
「水曜日:田中部長との面談。次回プロモーション企画について協議」
全部、完璧だ。
まるで、本当に凛が働いていたかのように。
凛は、さらにスクロールした。
「木曜日:記者会見準備。資料作成」
「金曜日:記者会見実施。無事終了。田中部長より高評価」
凛は、息を呑んだ。
記者会見も、やってくれたのか。
「土曜日・日曜日:休日。十分な休養を取りました」
「本日より、通常業務に復帰可能です。お疲れ様でした」
凛は、スマホを置いた。
信じられない。
本当に、誰かが代わりに働いていたんだ。
凛は、ソファに座った。
頭の中が、混乱している。
過去に行った。
悠真に会った。
そして、戻ってきた。
全部、本当だったんだ。
凛は、ポケットに手を入れた。
何か、硬いものが触れる。
取り出してみる。
貝殻。
悠真がくれた、貝殻。
凛は、貝殻を見つめた。
光にかざすと、虹色に光る。
これは、夢じゃない。
本当に、あったことなんだ。
凛は、貝殻を握りしめた。
悠真。
私、戻ってきたよ。
約束、守るから。
凛は、立ち上がった。
洗面所に向かう。
鏡の前に立つ。
鏡に映る自分。
大人の顔。
疲れた顔。
でも、目には、強い意志が宿っている。
凛は、貝殻を握りしめた。
「悠真を救う」
凛は、鏡に映る自分に向かって言った。
「もう、引き返せない」
凛の声は、はっきりしていた。
迷いは、ない。
「あの報告書のこと、ちゃんと調べる」
凛は、さらに続けた。
「メディアジールの副作用を、明らかにする」
凛の目に、強い光が宿った。
決意の光。
「会社と戦ってでも、真実を明らかにする」
凛は、貝殻を胸に当てた。
「約束は、守る」
凛は、深呼吸をした。
もう、戻れない。
第一のドアウェイを、通過した。
これからは、前に進むだけ。
悠真を救うために。
真実を明らかにするために。
凛は、鏡から目を離した。
部屋に戻り、スマホを手に取る。
明日から、また会社に行く。
でも、もう以前の凛じゃない。
戦う覚悟ができた、凛だ。
凛は、貝殻をそっと机の上に置いた。
この貝殻が、凛の支えになる。
悠真との約束の証。
凛は、窓の外を見た。
夜の街。
街灯が、点々と光っている。
凛は、静かに微笑んだ。
始まるんだ。
今から。