Good day ! 5
「それでは、フライトお疲れ様でした。乾杯!」

ノンアルコールビールで乾杯すると、早速泉が身を乗り出した。

「知らなかったなあ。そうか、佐倉キャプテンと藤崎キャプテンがご夫婦で、舞さんと双子のお兄さんがお子さんってことなんだな。あとは、野中部長のお子さんが翔一くん。で、合ってますか?」
「うん、合ってるよ」
「伊沢キャプテンの奥様もパイロットで、娘さんはうちのCAの美羽ちゃんですよね。親子で同じ航空業界、しかも同じ会社って、すてきですね」

笑顔を浮かべる泉に反して、伊沢はヒクッと表情を引きつらせる。

「泉くん。美羽のこと『美羽ちゃん』って呼んでるんだ」
「え? はい。CA達はみんなそう呼んでいるので。いけませんでしたか?」
「いけ……なくは、ない。けど、父親としては複雑で」
「そうですよね、失礼しました。これからは『美羽さん』とお呼びします」
「それもなんか……。いや、やっぱり『美羽ちゃん』で構わない。父親たるもの、どっしり構えないとな」

そう言ってグイッとグラスをあおると、今度は伊沢が泉に身を乗り出した。

「泉くんは、恋人作らないの? 敢えて今はフリーを楽しんでるとか?」
「いえ。好きな人が出来たので、いつか告白してつき合えたらいいなと思っているところです」
「そうなんだ。泉くんなら、間違いなくOKもらえるよ。ねえ、舞ちゃん」

美味しいエビチリをうっとり味わっていた舞は、慌てて頷く。

「はい、すごく美味しいです」
「ん? さては舞ちゃん、料理に夢中で話を聞いてなかったでしょ」
「あ、はい。すみません」

身を縮こめる舞に、泉がおかしそうに笑う。

「ははは! エビチリ頬張って、満面の笑みを浮かべてたもんね。いい笑顔だったよ」
「お恥ずかしい。でも本当に美味しくて」
「どれどれ。……おっ、ほんとだ。ピリ辛で本格的な味だな」
「ですよね! ふかひれスープも絶品ですよ。ぷるぷるつるんって感じで」
「ぷるぷるつるん? 可愛いな。ねえ、舞ちゃん。エビチリを『ぷりぷり』って言葉を使わないで褒めてみて」
「えー!? エビの褒め言葉に、ぷりぷり以外あるんですか? なんて難しい……。うーん、ぷくぷくとか?」
「ぷくぷくー? なんかフグが目の前を泳いでいった気がする」
「あはは! それって、ぷくとフグをかけてるんですか?」
「いや、舞ちゃんが言ったんだし」
「違いますよ、フグって言ったのは泉さんです。ね? キャプテン」

二人で顔を向けると、伊沢はなにやらニンマリしていた。

「キャプテン、どうかしましたか?」
「ん? いや。甘酸っぱいなと思って」
「あ、この酢豚ですか?」
「ぶっ! 舞ちゃんって、やっぱり時々恵真が降臨するよ。恐るべし、DNA」

キョトンとする舞に、なぜか泉も笑い出す。

ま、いいかと、舞も笑顔で食事を楽しんだ。
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