Good day ! 5
「ねえ、舞。この間の香港便って、チーフパーサーは泉さんだったの?」

その日の夜。

いつものように夕食を四人で食べてから、キッチンで食後のコーヒーを淹れていた美羽は、隣に立つ舞に話しかけた。

「ん? あ、そうそう! 美羽が言ってたイケメンチーフと、初めて一緒になったよ。すぐ分かった、この人か! って」
「でしょう? モデルさんみたいなスタイルの良さよね。腰の位置とか、私の胸くらいじゃないかな。顔を見上げて話すと、首が痛くなっちゃう」

二人で笑いながら、ソファの前のローテーブルに、四人分のコーヒーを運ぶ。

「舞、ステイ先でパパに中華料理ごちそうになったって言ってたけど、それって泉さんも一緒だったの?」
「そうなの。でね、泉さん、エビをぷりぷりって言葉を使わずに褒めてって言うの。難しくない?」
「えー、ぷりぷりを使っちゃダメなの? うーん、エビが……ぴちぴちで美味しい! とか?」
「あはは! 美羽、それだとエビが生きたままだよ」
「そっか。泉さん、難しいこと言うね。でもなんだか意外。普段の泉さんは、そういうこと言い出さないよ」
「そうなの?」

するとそれまで黙って二人の話を聞いていた翼が、いきなり「美羽」と呼んだ。

「はい」

美羽が顔を上げると、翼はソファに座ったまま腕を伸ばして美羽の手を取り、そのままグイッと引き寄せて、自分の隣に座らせる。

「……ん?」

舞は眉根を寄せて首をひねった。

少しムッとしたような表情の翼と、その隣で頬を赤らめてはにかんでいる美羽。

二人を見比べていると、なぜだか胸がキュンとした。

「えっ! ちょっと待って。美羽、もしかして……」

その指輪をくれた人って、と呟くと、美羽は照れたように、ふふっと笑う。

「まさか……、お兄ちゃん!?」
「うっそーん! いつの間に? アタシの知らないところでなにがあったの?」
「翔くん、ちょっと黙ってて。ね、美羽。そうなんでしょ?」
「黙ってても分かるわよ。もう、教えてくれたら良かったのに。いつからなの? このこのー、ラブきゅんきゅん!」
「翔くん!」

床に座ってしなだれかかってくる翔一をグイッと押し返し、舞はまじまじと二人を見比べた。

「お兄ちゃんが、美羽に? いつか迎えに行くって約束したってこと?」
「やーん! 翼ったら男前。おとぎ話の王子様よー」

翔一が身悶えると、美羽が小さく頷く。

「うん、本当に王子様みたい」

それを聞いて、ふいとそっぽを向いた翼の顔は、よく見ると赤くなっていた。
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