Good day ! 6


それからしばらくして、大翔はフライトシミュレーターがあるJWAのトレーニングセンターに来ていた。

定期的な訓練だが、なにやら折り入って話したいことがあると事前に伝えられ、なんだろうと首をひねりながら、とにかく向かう。

アメリカと日本のエアラインの違いはまだ把握出来ておらず、一体なにを言われるのかと緊張していた。

シミュレーターの前で待っていると、背の高い教官らしき人が近づいてくるのが見え、大翔は背筋を伸ばしてお辞儀する。

「初めまして、相澤 大翔と申します。本日はよろしくお願いいたします」

コツンと踵の音を響かせて、教官が目の前に立ち止まった。

「佐倉です。こちらこそよろしく」

その名前に、大翔はハッと顔を上げる。

「お父さん!?」
「は?」

整った顔立ちの教官は、怪訝そうに大翔を見つめた。

「俺、こんな大きな隠し子いたっけ?」
「あっ! いえ、その。失礼いたしました」

大翔は、しまったと顔をしかめて、慌てて頭を下げる。

舞から、父親はJWAに勤めていると聞いていたが、まさかパイロットだとは思いもしなかった。

しかも教官ということは、かなりの腕前ということだろう。

そしてとにかく、かっこいい。

身長も、180cmを超える自分と、同じくらいではないだろうか。

醸し出す大人の男としての余裕と、キリッとした表情。

その一挙手一投足が様(さま)になっていた。

「相澤キャプテン。日本での生活はもう慣れましたか?」

真っ直ぐ見つめられ、思わず女子のように胸がドキッとする。

「はい、操縦に関しては。ですが、日本での常識やしきたりなどは勉強不足で、いち社会人としてはまだまだです」

すると教官は、手元の資料に目を落とした。

「他の教官や現場のキャプテンから耳にする君の評価は、私の知る限り最上級だ。操縦の腕前は群を抜いているし、どんな時も冷静沈着。安心してシップを任せられる、と。ただ、まだ親しい社員はいないように見受けられ、気軽に相談したり悩みを打ち明けられる相手がいるのかどうかと、他のキャプテンが懸念していた」

そこまで言うと、教官は顔を上げて大翔に笑いかける。

「だが心配いらなそうだな。のっけからなかなか面白い展開だったよ。初対面でいきなり『お父さん』と呼ばれるって、なかなかない」
「はっ、その、大変失礼いたしました」
「気にするな。まあ、びっくりはしたけどな」
「そう、ですよね。……分かります」

自分もそうだったと、大翔は思い出して小さく頷いた。

「さてと、では早速訓練を始めよう。ついて来たまえ、息子よ」
「はい。あっ、いえ」

戸惑う大翔に、教官は楽しそうに笑った。
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