Good day ! 6
◇
それからしばらくして、大翔はフライトシミュレーターがあるJWAのトレーニングセンターに来ていた。
定期的な訓練だが、なにやら折り入って話したいことがあると事前に伝えられ、なんだろうと首をひねりながら、とにかく向かう。
アメリカと日本のエアラインの違いはまだ把握出来ておらず、一体なにを言われるのかと緊張していた。
シミュレーターの前で待っていると、背の高い教官らしき人が近づいてくるのが見え、大翔は背筋を伸ばしてお辞儀する。
「初めまして、相澤 大翔と申します。本日はよろしくお願いいたします」
コツンと踵の音を響かせて、教官が目の前に立ち止まった。
「佐倉です。こちらこそよろしく」
その名前に、大翔はハッと顔を上げる。
「お父さん!?」
「は?」
整った顔立ちの教官は、怪訝そうに大翔を見つめた。
「俺、こんな大きな隠し子いたっけ?」
「あっ! いえ、その。失礼いたしました」
大翔は、しまったと顔をしかめて、慌てて頭を下げる。
舞から、父親はJWAに勤めていると聞いていたが、まさかパイロットだとは思いもしなかった。
しかも教官ということは、かなりの腕前ということだろう。
そしてとにかく、かっこいい。
身長も、180cmを超える自分と、同じくらいではないだろうか。
醸し出す大人の男としての余裕と、キリッとした表情。
その一挙手一投足が様(さま)になっていた。
「相澤キャプテン。日本での生活はもう慣れましたか?」
真っ直ぐ見つめられ、思わず女子のように胸がドキッとする。
「はい、操縦に関しては。ですが、日本での常識やしきたりなどは勉強不足で、いち社会人としてはまだまだです」
すると教官は、手元の資料に目を落とした。
「他の教官や現場のキャプテンから耳にする君の評価は、私の知る限り最上級だ。操縦の腕前は群を抜いているし、どんな時も冷静沈着。安心してシップを任せられる、と。ただ、まだ親しい社員はいないように見受けられ、気軽に相談したり悩みを打ち明けられる相手がいるのかどうかと、他のキャプテンが懸念していた」
そこまで言うと、教官は顔を上げて大翔に笑いかける。
「だが心配いらなそうだな。のっけからなかなか面白い展開だったよ。初対面でいきなり『お父さん』と呼ばれるって、なかなかない」
「はっ、その、大変失礼いたしました」
「気にするな。まあ、びっくりはしたけどな」
「そう、ですよね。……分かります」
自分もそうだったと、大翔は思い出して小さく頷いた。
「さてと、では早速訓練を始めよう。ついて来たまえ、息子よ」
「はい。あっ、いえ」
戸惑う大翔に、教官は楽しそうに笑った。
それからしばらくして、大翔はフライトシミュレーターがあるJWAのトレーニングセンターに来ていた。
定期的な訓練だが、なにやら折り入って話したいことがあると事前に伝えられ、なんだろうと首をひねりながら、とにかく向かう。
アメリカと日本のエアラインの違いはまだ把握出来ておらず、一体なにを言われるのかと緊張していた。
シミュレーターの前で待っていると、背の高い教官らしき人が近づいてくるのが見え、大翔は背筋を伸ばしてお辞儀する。
「初めまして、相澤 大翔と申します。本日はよろしくお願いいたします」
コツンと踵の音を響かせて、教官が目の前に立ち止まった。
「佐倉です。こちらこそよろしく」
その名前に、大翔はハッと顔を上げる。
「お父さん!?」
「は?」
整った顔立ちの教官は、怪訝そうに大翔を見つめた。
「俺、こんな大きな隠し子いたっけ?」
「あっ! いえ、その。失礼いたしました」
大翔は、しまったと顔をしかめて、慌てて頭を下げる。
舞から、父親はJWAに勤めていると聞いていたが、まさかパイロットだとは思いもしなかった。
しかも教官ということは、かなりの腕前ということだろう。
そしてとにかく、かっこいい。
身長も、180cmを超える自分と、同じくらいではないだろうか。
醸し出す大人の男としての余裕と、キリッとした表情。
その一挙手一投足が様(さま)になっていた。
「相澤キャプテン。日本での生活はもう慣れましたか?」
真っ直ぐ見つめられ、思わず女子のように胸がドキッとする。
「はい、操縦に関しては。ですが、日本での常識やしきたりなどは勉強不足で、いち社会人としてはまだまだです」
すると教官は、手元の資料に目を落とした。
「他の教官や現場のキャプテンから耳にする君の評価は、私の知る限り最上級だ。操縦の腕前は群を抜いているし、どんな時も冷静沈着。安心してシップを任せられる、と。ただ、まだ親しい社員はいないように見受けられ、気軽に相談したり悩みを打ち明けられる相手がいるのかどうかと、他のキャプテンが懸念していた」
そこまで言うと、教官は顔を上げて大翔に笑いかける。
「だが心配いらなそうだな。のっけからなかなか面白い展開だったよ。初対面でいきなり『お父さん』と呼ばれるって、なかなかない」
「はっ、その、大変失礼いたしました」
「気にするな。まあ、びっくりはしたけどな」
「そう、ですよね。……分かります」
自分もそうだったと、大翔は思い出して小さく頷いた。
「さてと、では早速訓練を始めよう。ついて来たまえ、息子よ」
「はい。あっ、いえ」
戸惑う大翔に、教官は楽しそうに笑った。