Good day ! 6
「なるほど、さすがだな」

シミュレーターでのフライトを終えると、教官は書類に書き込みながら呟く。

「トラブルてんこ盛りにしてみたが、いとも簡単にクリア。しかも焦りや迷いも感じられなかった。それにこれは私の感覚なんだが、君は操縦のセンスがいい。スマートに無駄なく、ひょうひょうとこなす。パイロットになるべくしてなった、とでも言うのか」

そして顔を上げると、大翔ににこやかに笑いかけた。

「君と一緒に飛んでみたかった。残念だな、もう少し早くうちに入ってくれれば良かったのに」

その言葉に、大翔は考えを巡らせる。

「教官は、つい最近まで空を飛ばれていたんですか?」
「ん? ああ。今年の3月がラストフライトだった。そのあとは教官としてコックピットに同乗出来るよう、航空身体検査だけは受けている」
「ということは、半年前ですか?」
「そうなるな。君は4月入社だろう?」
「はい。ですが、2月にはこちらに採用されることが決まっていました。なんとなく、生活の手続きが大変そうだから、入社は4月まで待っていただいて……」

すると教官は「なに!?」と鋭い視線を向けた。

えっ!と、大翔は怯む。

「どうしてすぐに来てくれなかったんだ! あー、それを聞いたらますます悔しい。君と一緒に飛べていたら、どれだけ楽しいフライトになっただろう。なんてことだ。評価マイナス1」
「ええ!?」
「ははは! 冗談だよ。でも君がJWAに来てくれて嬉しい。どうか末永くよろしく頼む」
「こちらこそ。どうぞよろしくお願いいたします」
「ああ。という訳で、相澤キャプテン。Mixed Fleet Pilotになってほしい」
「はい。え、ええ!?」
「今、頷いたな」
「いえ、あの……」

大翔は焦って言葉が出て来ない。

「おいおい、どうした。操縦桿を握ってた時の冷静さはどこ行った?」
「ですが、いきなりそのようなお話になるとは」
「なぜだ? 君のように優秀なパイロットなら、いずれは二刀流にと思っていたんじゃないか? ましてやアメリカのエアラインにい
たんだから」

確かにアメリカでは珍しくないが、大翔はそこまで貪欲にはなれなかった。

自分に任せられたフライトにベストを尽くす。

常にそのことだけに集中してきた。

アメリカでもそうだったのだから、日本で目指すつもりもなかった。
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