新堂さんと恋の糸
 「あの、それなら玲央くんが行ったほうが……」
 「人が大勢来るところに行くのは嫌だよ。ポメ子さん招待状もらってたでしょ?」
 
 もらってはいるけど、それは担当を外れる前に渡されたものだ。

 「……そっか、もうポメ子さんは新堂さんのことは心配じゃないんだ?」
 「それは心配ですけど……!」

 心配だし、会いに行きたい。でもどんな顔して会えばいいのか。
 それにもしも『今さら何しに来た?』とでも言われたら――たぶん立ち直れない。私のぐずぐずとした泣き言に、玲央くんの呆れたような声がする。

 「あのさ、俺が前に言ったこと忘れた?」

 (……前に言ったこと?)

 「新堂さんは、言ってることと考えてることが必ずしも一致しない人だって」

 事務所に来た初めの頃に、言われたような気がする。
 あのときも今も、その言葉の意味がいまいちちゃんと理解できていないけれど。

 「まぁそういうことだから、新堂さんのことよろしくね《《泉さん》》」

 「!?玲央くん、いま、」
 「ほら、早くしないと閉館時間になっちゃうよ?じゃあねポメ子さん」
 「また戻ってる!」

 電話越しに聞こえる楽しそうな笑い声に、私は玲央くんのあの小悪魔みたいな笑顔を思い浮かべた。
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