初恋のジュリア


翌週、わたしは篠宮さんに頼まれていた"エバー·ファンタジー リメイク"の予約を入れた。
他店の統計を見ても、予約開始をしたばかりだというのに件数は多く、人気がある作品なんだという事を実感させられた。

そして先週末、福永さんに誘われて居酒屋へ行ったはいいが、深川さんの乱入により早々に帰ってしまった事を福永さんに謝罪した。
福永さんは「気にしないでください。」と言ってくれたが、あの後、深川さんの相手をするのが大変だったらしく申し訳なく思った。

しかし、深川さんのお目当ては福永さんだ。
わたしが居たところでどうにも出来なかっただろう。

そんな通常運行の毎日が過ぎ、土曜日には手作り料理を持参して篠宮さん宅へお邪魔するというルーティンが確率しつつある一週間。
篠宮さんと過ごす土曜日がわたしにとっては、心躍る曜日へとなっていた。

篠宮さんはどんな料理を作って行っても「美味しい!」と大袈裟な程に喜んでくれ、他愛も無い話ですら楽しかった。
気を使わずに自然体で、自然に笑えている自分に気付き、篠宮さんはわたしにとって"ただのお隣さん"ではなくなってきている事を実感せずにはいられなかった。

いつしか、わたしたちは連絡先を交換し、メッセージのやり取りもするようになっていた。

『今日は14時には仕事を切り上げれそうなので、夕飯はいつもの17時からでお願いします!』

土曜日の朝、篠宮さんから届いたメッセージ。

(土曜日も仕事なんて大変だなぁ。)

わたしはそう思いながら、『了解しました!じゃあ、17時頃に伺いますね。お仕事頑張ってください!』と返信をした。

「さて、今日は何作ろうかなぁ。」

そう独り言を口に出し、エプロンを身に付ける。
冷蔵庫の中は、昨日の仕事帰りに買って来た食材で埋め尽くされており、ちょっと気合いを入れて買い込み過ぎた事を反省した。

(先週は魚料理持って行ったから、今日はロールキャベツと根菜の明太子サラダ作って持って行こう。)

そう思い、わたしは篠宮さんが喜んでくれる様子を思い浮かべながら料理をしていった。

そして、待ちに待った17時が近付き、わたしは温め直したロールキャベツと根菜の明太子サラダをタッパーに詰めていった。
この時間まで何度も時間を確認しては、ソワソワするわたしは、まるで遠足を楽しみにする子どものようだった。

ただお隣へ食事をしに行くだけでも化粧をし、服装にも気を遣う。
洗面所の鏡前で最終チェックを済ませたわたしは、タッパーを抱え、篠宮さん宅へと向かった。

"ピーンポーン"

このインターホンを鳴らすのも、今日で四度目。
最初の緊張したあの日が、凄く前の出来事のように感じた。

少し待つと、ガチャンと音を立て、302号室のドアが開く。
そのドアの間からは、スーツから普段着に着替えた篠宮さんが姿を現した。

今日は、上はグレーのパーカーに、下は黒のデニムというシンプルな服装だ。

「いらっしゃい!どうぞ〜」
「お邪魔します。」

わたしがそう言って中へ入ると、篠宮さんは自然な感じで「持ちますよ。」と言って、わたしが持っていたタッパーを代わりに持ってくれ、「今日もありがとうございます!」と言って笑顔を見せた。
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