日本神学園 俺のチームに入らないか?

日本神学園に入学しました

とにかく憂鬱だ。
学校の中に女子一人なんてありえない。
よりによって共学化した第一号の女子として転校することになった水久(みく)マリ。
通称ミクマリ。そのままだが、みんなそう呼ぶ。
昔から伝わる季節の神様を先祖に持つ者が集まる学園の中等部がある。
先祖が神だとか言われる人たちがいっぱいいる学園には行きたくないが、両親の勧めで仕方なく通学することになる。

今回共学化による転校というのは、ミクの先祖は水の女神の水分神(みくまりのかみ)だったからだ。
その後、女子生徒を増やしたいという話だけど、男子に囲まれて困ってしまうんですけど。
どの季節にも必要な水の神であるというだけで近寄ろうとするんだと思う。

水分神(みくまり)は『古事記』に登場する水を分配する神さま。神名の「み」は水、「くまり」は「配り」の意味で、山谷より流れる水を田畑に配分して、灌漑かんがいの便を図り給う神とされるらしい。天水分神は天からの水の分配を司り、国水分神は地上の水の分配を司るとされるというけれど、私には全然わかんない。

だってみんなだって、先祖のことなんて名前も人柄も容姿もわからないでしょ。
たしかにうちは神社をやっているけど、それだけじゃ食べていけないからお母さんは役所で仕事をしているし、お父さんは兼業でライター業なんかを副業でやってる。神社が賑わうときは年に二度の祭りの時や観光シーズンだ。
お父さんは一応宮司だけど、開店休業の時もあるような静かな神社だ。

親はきっと生まれ変わりだとか言って水久マリなんてそれっぽい女神の名前を充ててるけど、実際何の異能もない。

そこは隠れた進学校と言われ、難関高校や難関大学に進学する確率が高い。

この学園にはチームがあり、どこかに所属しなければならない。
男女共学になったばかりで女子生徒が私しかいないのは憂鬱だ。

学園には、チャラいヤンチャな不良みたいな男子がたくさんいて。
ミクマリはイケメン男子免疫がないため、あたふたしてしまう。


四季がある日本では古来より季節を司る女神がいた。
春は佐保姫。
夏は夏髙津日(夏之売)神。
秋は秋毘売神・竜田姫。
冬は宇津田姫。別名白姫、黒姫。そして、唯一の男性の神は天冬衣神。
という神がいたらしい。
その子孫にあたるのが、

春野桜蘭(はるのおうらん)→桜を出す異能を持つ花の似合うイケメン。
夏海快晴(なつうみかいせい)→いつも夏の海に行くようないでたちをした色黒日焼け男子。花火を出すことができる異能がある。
秋空紅葉(あきそらくれは)→少し寂し気な印象が強いが、紅葉を一瞬で作ることができる異能を持つ。
冬雪氷河(ふゆのひょうが)→一瞬で氷の世界を作り出す異能の持ち主。冷たい瞳をしているが、根は熱い。

この学園は同じクラスにグループ、つまりチームが存在している。
4つのチームには、睦月、如月、弥生、卯月、五月、水無月、神無月、師走というメンバーがいる。
チーム春(3月から5月)、チーム夏(6月から8月)、チーム秋(9月から11月)、チーム冬(12月から1月)生まれで形成されている。
それぞれ、お互いにいがみ合っていて仲良くはない。
特にリーダーである4人はライバル心があり、仲良くはない。
それぞれのチームには日本の四季の良さ、つまり自分のチームの四季が一番いいということで、うちのチームに入らないかと勧誘されてしまう。
同じクラスにチーム干支というグループもあり、神の血を引く男子中学生が日本全国から集まってきているらしい。
チーム干支、チーム曜日からの勧誘もあるらしいと聞いた。
日本の凄い人が集まる学園の顔面偏差値と学習偏差値は日本一!
ここは一般的に言う進学校みたいなものらしいが、血筋がみんな神に由来するらしいから、頭脳の偏差値が高いのはわかる。


正直ここは異能を持つ人間が多くて驚いている。
今まで通っていた公立小学校にそんな子供はいなかったし、いたとしても生まれつきのものでごく少数だという。
1か月も4人のめんどくさい男子と一緒のクラスで生活だなんて、不登校まっしぐらだ。
私は見た目がチャラい人とか遊んでいそうな人とか怖そうな人とか基本苦手。
ここにいる人はそういう要素を持った人ばっかり。
しかも女子一人ってどういうことよ。

「やっぱり春が一番だと思うよ。桜の季節は入学式がある人生のスタートの時期だし、お花見の頃は春は気候も温かくなり、花が美しく過ごしやすいだろ」

「いやいや夏が一番だよ。日本の夏は夏祭りに花火に恋の予感がするイベント満載だし」

「イベントと言えば、冬だろ。クリスマスは恋人の一大イベントだよ」

「いや、秋は紅葉が美しい。日本が最も色づく季節で、過ごしやすい時期だよ。月見とかめっちゃ日本らしい行事もあるし」

「どの季節もいいとおもうから、一番とかはないんじゃない? あとは個人の好みによるし」
 季節自慢を始める男子があきらかに子供っぽく感じた私は突っ込んでみる。
 でも、みんな自分の季節に誇りを持っているから、そこは難しい。

 王子様男子、春野が解説する。
「花見の由来を知ったら絶対チーム春に入りたくなるって思うんだけど。桜は稲の神様が宿る木なんだよ。桜の花が咲くと山から神様が下りてきて、一緒に花見をして豊作をねがったってわけよ。神様とつながってる桜ってスゲーと思わない?」

 陽キャな男子、夏海が解説する。
「七夕ってエモいと思わない? 男女が年一で会って天の川でのロマンスって悲恋と星座を合わせたすごい話だと思うんだよね。祭りにまでなってるし。夏が恋の季節っていうのも納得だろ。彦星はわし座のアルタイル。織姫はこと座のベガ。星座ってロマンあるだろ」

 影のある男子、秋空が解説する。
「月見は一番過ごしやすい時期のイベントなんだって。レジャーやイベントも暑くもなく寒くもない秋が一番なんだよ。稲の収穫も秋だし、収穫祭なんていうのもあるくらい有能な季節なんだって。まぁどうせ秋なんてって思うかもしれないけど。十五夜って実は毎月あるんだからオールシーズンを制覇したようなもんだね」

 クールだけど負けん気な男子、冬雪が解説する。
「クリスマスのもみの木は永遠の命を現わしてるんだよ。神秘的だろ。赤いりんごは豊かさの象徴。白いろうそくはけがれのない心。緑、赤、白はクリスマスカラーなんだよ。けがれのない心なんて結婚式にも通じるような話だよな。一番ロマンティックなんだって。冬は恋の季節だよ」

「だから、うちに入れ。それぞれの季節でデートして決めるってのはどうだ?」
 4人のチームのリーダーがそれぞれ勧誘する。

「おっと、ちょっと待った。ミクマリさんにはチーム干支に入ってもらいたいんだけどな」
 アイドルグループのような男子が入った来た。
 もしや噂のチーム干支なの?

「十二支は子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥の12人から構成されているんだ」
 他よりも少し人数は多いようだ。
 どことなく、動物の名残を感じる印象があった。

「チーム曜日もお忘れなく。俺らは太陽月惑星から名前が付いて生まれたんだよ」
 またもや個性的かつイケメンの男子グループがやってきた。7人で構成されているらしい。

「この学園にいる俺たちはどれも日本人に欠かせない存在の神の末えいなんだよ。君は水の女神の末えいだろ。どうか俺たちの女神としてこの学園で一緒に過ごしてもらえたら俺らは嬉しいんだけど」

 頭の中でこの先が不安という心が渦巻く。
 でも、心はどこか期待と希望に満ちていた。
 水の女神の血を引くというのは聞いてはいるけど実感はない。

「この日本を俺たちが支えて変えていくんだ。そのためにこの日本神学園は存在している」

 壮大すぎる話に頭はついていけないけど心は理解しているような感じがしていた。
 私が生まれてきた意味をこの学園で知っていこう。
 そのために自分のルーツである日本のことをもっと知っていかないと。
 当たり前に存在する四季の季節、干支、曜日。
 私たちはこれがなくなったらかなり不便だと思う。
 そんな彼らと私たちの物語が始まる。
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