こじらせCEOの壮大すぎる初恋計画 〜二代目女社長、冷徹なライバルに理不尽な政略結婚を迫られたはずが、すべては22年前からの策略でした!?〜
ただ押されただけなら膝をつくだけだからマシだった。
こんなところにシャンパングラスをお盆に乗せた黒服さえいなければ。
「遥!」
あ、はじめて名前を呼ばれたかもしれない。
そんなどうでもいいことまで気づいてしまうほどスローモーションな場面に遥は失笑する。
もう少し運動神経が良かったら、そのシャンパングラスは避けられるのだろうな。
ごめんね、黒服さん。きみは悪くないよ。
お嬢様、押すなら誰もいない方に押しなさいよ。
頭は冴えているのに身体は言うことを聞かない。
遥はギュッと目を閉じながら床に激突する瞬間を待つしかなかった。
……あれ?
バリバリと音がするのに痛くない?
想像していた衝撃がなかなか来ないことに気が付いた遥は、現状を把握しようとゆっくりと目を開ける。
「大丈夫か?」
目の前にあるのはV字のウェストコート。
そのまま見上げると困惑していても整いすぎた顔が近くにあった。
「なぜこんなに濡れている?」
「ねぇ、グラス踏んでる」
「そんなこと気にしている場合か!」
自分のことを心配しろと隼人に言われた遥は、ようやく自分が割れたグラスに倒れ込みそうだったという事実を思い出し、血の気が引いていくのを感じた。
もし隼人が支えてくれなかったら、今ごろ流血事件だ。
「どうした、小百合。なにがあった?」
今日の主役、伊集院社長が駆けつけ、現状を把握しようと周りを確認する。
青白い顔で震える孫娘。
この世の終わりのような顔をしたシャンパンを落とした黒服。
ずぶ濡れの私と、シャンパングラスを踏みつけている間宮。
「これはいったい……?」
「お爺様! 彼女が隼人さんに近づくなって私に嫌がらせをしたの!」
だから追い出してと騒ぐお嬢様に、遥は呆気にとられた。
「間宮くん、うちの孫がきみを慕っているとは言ったが、これはさすがに」
「伊集院社長、俺の婚約者を突き飛ばしたのは……」
あぁ、このままではもっと騒ぎになってしまう。
どうせ伊集院社長は孫を信じるだろうし、隼人との関係も崩れてしまっては今後の取り引きにも影響が出てしまう。
遥は隼人の口元を濡れた手で軽く押さえ、会話の邪魔をした。
「伊集院社長、新しい門出の日にお騒がせしてしまい、大変申し訳ありませんでした」
遥は深々とお辞儀をすると、震えている黒服に視線を移す。
「ぶつかってしまってごめんなさいね。怪我はない?」
「は、はい。大丈夫、です」
これで黒服は気を付けるように注意されたとしても、怒られたり、クビになることはないだろう。
あとはお嬢様。
本当なら全部ぶちまけてやりたいところだけれど、今日の主役を悲しませるわけにはいかない。
私がアラサーでよかったわね。
あなたと同じくらいの年だったら、大喧嘩だったわ。
「御覧の通り少々トラブルで濡れてしまいまして、今日は失礼させていただきます」
遥が再びお辞儀をすると、伊集院社長は納得できないという顔で遥を睨んだ。
こんなところにシャンパングラスをお盆に乗せた黒服さえいなければ。
「遥!」
あ、はじめて名前を呼ばれたかもしれない。
そんなどうでもいいことまで気づいてしまうほどスローモーションな場面に遥は失笑する。
もう少し運動神経が良かったら、そのシャンパングラスは避けられるのだろうな。
ごめんね、黒服さん。きみは悪くないよ。
お嬢様、押すなら誰もいない方に押しなさいよ。
頭は冴えているのに身体は言うことを聞かない。
遥はギュッと目を閉じながら床に激突する瞬間を待つしかなかった。
……あれ?
バリバリと音がするのに痛くない?
想像していた衝撃がなかなか来ないことに気が付いた遥は、現状を把握しようとゆっくりと目を開ける。
「大丈夫か?」
目の前にあるのはV字のウェストコート。
そのまま見上げると困惑していても整いすぎた顔が近くにあった。
「なぜこんなに濡れている?」
「ねぇ、グラス踏んでる」
「そんなこと気にしている場合か!」
自分のことを心配しろと隼人に言われた遥は、ようやく自分が割れたグラスに倒れ込みそうだったという事実を思い出し、血の気が引いていくのを感じた。
もし隼人が支えてくれなかったら、今ごろ流血事件だ。
「どうした、小百合。なにがあった?」
今日の主役、伊集院社長が駆けつけ、現状を把握しようと周りを確認する。
青白い顔で震える孫娘。
この世の終わりのような顔をしたシャンパンを落とした黒服。
ずぶ濡れの私と、シャンパングラスを踏みつけている間宮。
「これはいったい……?」
「お爺様! 彼女が隼人さんに近づくなって私に嫌がらせをしたの!」
だから追い出してと騒ぐお嬢様に、遥は呆気にとられた。
「間宮くん、うちの孫がきみを慕っているとは言ったが、これはさすがに」
「伊集院社長、俺の婚約者を突き飛ばしたのは……」
あぁ、このままではもっと騒ぎになってしまう。
どうせ伊集院社長は孫を信じるだろうし、隼人との関係も崩れてしまっては今後の取り引きにも影響が出てしまう。
遥は隼人の口元を濡れた手で軽く押さえ、会話の邪魔をした。
「伊集院社長、新しい門出の日にお騒がせしてしまい、大変申し訳ありませんでした」
遥は深々とお辞儀をすると、震えている黒服に視線を移す。
「ぶつかってしまってごめんなさいね。怪我はない?」
「は、はい。大丈夫、です」
これで黒服は気を付けるように注意されたとしても、怒られたり、クビになることはないだろう。
あとはお嬢様。
本当なら全部ぶちまけてやりたいところだけれど、今日の主役を悲しませるわけにはいかない。
私がアラサーでよかったわね。
あなたと同じくらいの年だったら、大喧嘩だったわ。
「御覧の通り少々トラブルで濡れてしまいまして、今日は失礼させていただきます」
遥が再びお辞儀をすると、伊集院社長は納得できないという顔で遥を睨んだ。