こじらせCEOの壮大すぎる初恋計画 〜二代目女社長、冷徹なライバルに理不尽な政略結婚を迫られたはずが、すべては22年前からの策略でした!?〜
 ロック画面をフェイス認証で簡単に外され、隼人の電話番号を登録される。
 いくつかアプリも勝手にダウンロードされ、その中には玄関の電子ボードのアプリもあった。

「なんで勝手に」
 それよりもいつまでこの態勢?
 ヒールを履いていない分、いつもよりも隼人が大きく感じる。
 私だってそんなに背は低くないのに。
 
「電話したら3コール以内に出ろ」
「は? そんなの無理でしょ」
 仕事中とかどうするのよと思わず振り返った遥は、すぐに失敗したと気づいた。
 密着している隼人の顔がすぐ後ろにあると知っているはずなのに。
 
 おでこに隼人の唇が触れた遥は、身長差にはじめて感謝した。
 同じくらいの身長だったら口だったかもしれない。

「は、早く返してよ」
 平常心、平常心。
 経験がまったくないことがバレませんように。

 スマートフォンを返してもらった遥は、隼人を振りほどき何事もなかったかのように自分の部屋へ。
 部屋の扉を閉めた瞬間、真っ赤な顔でへたり込みながら、遥はそっとおでこに手を置いた。

 事故だし、事故!
 別にデコチューじゃないし!
 バックハグも彼氏いない歴29年には刺激が強すぎる。
 
 遥は「はぁ~」と大きな溜息をつきながら、スマートフォンに登録された隼人の連絡先をしばらく眺めた。

    ◇

 翌日の月曜日はもちろん朝から佐久間と富樫に掴まった。

「なんなんだよ、あいつ」
「ハルカちゃん大丈夫だった?」
「昨日はごめんね。タクシーで送ってくれただけだから」
 大丈夫、大丈夫と答えた遥に、佐久間と富樫は溜息をついた。

「全然大丈夫じゃねぇ」
「そうだよ。家を知っているってことでしょ」
 必死な二人には「一緒に住んでいます」なんて言えないなぁと遥は視線を逸らす。

「どうしてM-ADCのCEOがハルカちゃんを監視するの?」
 おかしいよという富樫の言い分はもっともだと思う。
 私もまさか肉フェス会場まで迎えに来るなんて思わなかった。

「会社を継いでまだわからないことがいっぱいで、それで助けてくれているだけだよ」
 お父さんの知り合いだったからと遥は言い訳をする。

「プライベートまで口出しするのはおかしいだろ」
 あいつ絶対にハルカを狙っているから気をつけろと佐久間に言われた遥はビクッとしてしまった。

「さあ、就業時間!」
 仕事、仕事! と遥は逃げ出す。
 まだまだ話したそうな佐久間と富樫に手を振り、遥は社長室に入った。

 先週、事務のユミが寿退社してしまったから、これからは私がやらなくてはいけない。
 一応引き継ぎはしたし、もしわからなければ連絡くださいとユミは言ってくれたけれど。
 遥はユミが作ってくれたマニュアルに沿って退職者用の書類を準備し、それぞれ封筒に入れた。
 
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