こじらせCEOの壮大すぎる初恋計画 〜二代目女社長、冷徹なライバルに理不尽な政略結婚を迫られたはずが、すべては22年前からの策略でした!?〜
 従業員はあと22人。
 今のツクモソフトに全員分の退職金を払うお金はもうない。
 早く実家を片付けて売らなくては。
 家は古いが立地は良いのできっと売れるはずだ。
 
 遥は昨日無理やり入れられた電子ボードアプリで早速メッセージを送った。

『今週は実家の片付けをしたいので金曜まで毎日帰りは21時頃です』
『了解』
 すぐに返事が来た電子ボードを見ながら、特定の相手にしか送れないという制限が小さい子どもやお年寄りにはよさそうだと改めて感じてしまった。
 
「このアプリは?」
 一緒に入れられた見慣れないアプリを起動させると、カメラが表示される。
 よくわからないまま目の前に置いてあったユミのマニュアルの写真を撮ると、写真が文字起こしされ文字化けもほとんどない状態でスマートフォンに保存された。

「え、嘘でしょ」
 遥は手書きのメモを読み取り保存する。
 手書きでもほとんど文字化けせずに読み込んだアプリの優秀さに、遥は絶句した。

「……技術力が違いすぎる」
 うちの会社だって文字起こしを考えたことはある。
 工場はまだまだ手書きが多いからだ。
 でもおじさんたちが手書きした文字を正しく読み込むことはできなかった。

「もっと細かい手書き……富樫!」
 遥は社長室を出て富樫の席に。

「なんでもいいから細かい字とか図とか書いてある紙、写真撮らせて!」
「えっ? えぇっ? これでもいい?」
 富樫が出したのは手書きのER図。
 これなら枠も線もある。そしてお世辞にもあまり上手ではない富樫の字だから読めないでしょと遥はアプリに挑む気持ちで読み取った。

「なんで読めるのよ」
 遥でも読みにくい富樫の字の『顧客ID』や『注文日時』もちゃんと読めている。
 『特別調達フラグ』という言葉は読めずに『特別稠還フラグ』になってしまったが、その他はほぼ読み取っていた。
 もちろん線や枠もきちんと復元済だ。
 
「ハルカちゃん、それM-ADC?」
「うん。どんなものを作っているのかなと、……敵情視察みたいな?」
「敵なの?」
「町工場の仕事いっぱい奪われているんだからライバルでしょ」
 でもこんなふうに手書きがほとんど読めるなら、うちじゃなくてM-ADCを選んで当然だと遥は溜息をついた。

「そのアプリ、開発したのM-ADCのCEOだよ」
「え?」
 隼人が開発者?

「こんなにすごいのが作れるのに、どうしてCEOなんてやってるのよ!」
 開発しなさいよと思わず言ってしまった遥を、富樫は「だよねぇ」と同意した。
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