こじらせCEOの壮大すぎる初恋計画 〜二代目女社長、冷徹なライバルに理不尽な政略結婚を迫られたはずが、すべては22年前からの策略でした!?〜
「ねぇ、それがお客さんに対する態度なの?」
 あんたみたいなのがうちの営業だったら速攻クビだわ。
 白河の横から声をかけた遥を上から下まで眺めたあと、富樫がパソコンを入れた鞄のロゴ「ツクモ」に気づいた男性は、馬鹿にしたように笑った。
 
「あ~、もうすぐ潰れそうなツクモさん」
「そういうあんたは誰なのよ」
「M-ADCって知ってます? アメリカで有名なんですけど」
 ニヤニヤと勝ち誇ったように笑っている営業を今すぐぶっ飛ばしたい。
 残念ながら誰かを殴ったことがないから、殴り方がわからないけれど、脳内では右ストレートを何度も再生中だ。

「M-ADCさん、おたくとの契約はやめるよ」
「は? うちと契約するって言ったじゃないですか! 違約金払ってもらいますよ!」
 今さらやめるってなんなんだと男性は声を荒げる。
 
「契約書にサインしていないのに、M-ADCは違約金を取るの?」
「何回ここに来たと! 無駄足踏ませた詫びに違約金くらい払ってもらわないと営業成績が落ちるだろ」
 自分の営業成績のために違約金?
 そんなのおかしくない?

「違約金だなんて……」
 そんなの困ると白河が呟く。
 
「払う必要ないですよ、白河さん」
「関係ない奴は黙ってろよ」
「関係あるわよ、子どもの頃からお世話になったおじさんなんだから!」
 この工場に遊びに来ているキャリアはあなたより長いのだと遥は男性を睨みつけた。

「契約書にサインしていないのだから、支払う義務はありません」
「こっちは時間割いてんだよ」
「営業が商品売り込みにかける時間は販売価格に含んでいるはず。契約が取れないのはあなたの実力不足でしょ」
 工場からどんどん契約を打ち切られている私が言うのもなんだけどさ!
 契約がほしいのはわかるけれど、こういう強引な方法はダメだ。
 会社の印象が悪くなるだけだ。

「あなたは今日、上司に怒られたから文句を言いに来たのよね?」
「なんの用だったか聞いて来いって言われたから来たんだよ」
 電話にしようと思ったら、工場へ行けと言われたのでわざわざ来たのだと男性は肩をすくめた。
 
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