こじらせCEOの壮大すぎる初恋計画 〜二代目女社長、冷徹なライバルに理不尽な政略結婚を迫られたはずが、すべては22年前からの策略でした!?〜
「まだ捜査段階だから内緒ね」
 みんなには言わないでと頼まれた富樫は、隼人を睨みつけた。

「それで、罪悪感を感じてサーバーもパソコンも全部準備してくれたってわけ?」
「そうだ」
 いつもはほんわかしている富樫が怒る姿に遥は目を見開く。

「ちょっと、富樫。別にこの人のせいじゃ」
「いや、そいつの言うとおりだ。うちの社員が悪かった。データの復旧は終わっているから、あとはそいつだけでできるだろう」
 隼人は自嘲しながら玄関に向かい、そのまま出て行く。

「ちょっと待っ……」
 まだお礼も言ってないのに。
 追いかけようとした遥は富樫に止められる。

「ハルカちゃん、あの人とどういう関係なわけ?」
「どうって……」
 期間限定の婚約者?
 会社が買収されそう?
 ううん、買収するつもりならこんなふうに助ける必要なんてないはず。

「お父さんの知り合いで、いろいろと助けてくれている人だよ」
「なんで?」
 知り合いだからって助けるなんておかしいと富樫に言われた遥は戸惑った。

 取引先でさえ、父が亡くなったら契約更新しないと言ったくらいだ。
 ただの知り合いがここまで助けてくれるのはやっぱりおかしいってこと?

「どうしてアメリカから帰ってきているの? いつまでこっちにいるの?」
「え? そんなの知らな……」
 なんで富樫がそんなことを聞くの?
 どうしてアメリカから帰ってきているって言うの?
 来ているではなくて帰ってきている?

 困惑した遥にようやく気付いた富樫は「ごめん」と謝る。

「残りの設定するね」
 逃げるようにパソコンの前に行ってしまった富樫に声をかけることができないまま、遥は取引先に送るお知らせを作成した。
 
 火災発生の日時、被害状況、出火原因は調査中。
 隼人のアドバイス通り、移転先は書かずに会社の問い合わせ窓口のメールアドレスのみ。
 事務所はないが業務に支障はないと記載した。

「ハルカちゃん、パソコンの設定終わったよ」
「ありがと、富樫。急にごめんね」
 時計はもうすぐ17時。
 本当は富樫にご飯でも奢りたいけれど、隼人も気がかりだと悩んだタイミングを見計らったように、隼人からメッセージが届く。

『あいつと飯でも食ってこい』
 本当に何でも見透かしている男だなと遥はメッセージを見ながら目を伏せた。
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