こじらせCEOの壮大すぎる初恋計画 〜二代目女社長、冷徹なライバルに理不尽な政略結婚を迫られたはずが、すべては22年前からの策略でした!?〜
 最初のパソコンに戻ってきた富樫は、また何か作業をする。

「ハルカちゃん、また『次へ』をお願い」
「もう一周!?」
「あと二周するかも」
 まだダイニングの方もあるよと笑われた遥は、廊下の向こうのダイニングを眺めながら溜息をついた。

「和室オフィス、ふかふかクッション置きたいね」
「好きなの置いて」
「いいの? 明日持って来よう!」
 すぐにクッションだらけになりそうだけれど、いいよね、お父さん。
 遥は和室の棚の上に置いた父の写真に微笑みかける。

「サーバーの復旧終わったぞ」
「えっ? 復旧?」
「休みに入ってすぐ、HCSCにバックアップ取っただろう?」
 ということは休み前、最終日にみんなが保存したデータのまま仕事が再開できるということ?

「あっ、本当だ。データあるよ、ハルカちゃん」
 契約書関係もシステムも開発ソフトのインストールに必要なキーもちゃんと保存されているから大丈夫だと富樫は確認してくれる。

「よかった。みんなが作ってくれたシステムが無事で」
「あとはメールが残っているかだけれど。佐久間くんはメール大事だと思うから」
 営業だからメールがないと困るだろうと言う富樫に、隼人はこっちだと声をかけた。

「サーバーに近い5台、赤線でつながっているパソコンだけ外部につながっている」
 メールやインターネットができるのはこの5台だけだと隼人は富樫に説明する。
 通信機器を見せながら説明されたが、さっぱりわからない遥は早々に理解を諦めた。

「M-ADCの中古で悪いな」
 複合機を乗せたトラックも到着し、無事に設置される。
 中古と言ってもツクモソフトにあった年代物の複合機に比べればかなり新しい機種だ。

「ハルカちゃん、みんなに明日からこっちに出社って伝えた?」
「伝えてない!」
 遥はさっそく使えるようになった赤線のパソコンで地図を出し、連絡アプリを使って社員全員にメッセージを送った。
 すぐに嵐のような返信がアプリに届く。
 
『火事? 巻き込まれ?』
『会社休みにならないの?』
『俺のフィギュアが!』

「こっちの対応はしておくから、ハルカちゃんは取り引き先に移転のお知らせを送って」
「あ、そうだね。お知らせを作らないと」
「遥、ここがオフィスだということは伝えるな」
 まだ捕まっていないと遥の手を止めた隼人の言葉に、富樫は顔を上げた。

「……放火だったってこと?」
「タバコのポイ捨てだ」
「じゃあ、別に」
「故意的な」
 おそらくあんなに火事になるとは思っていなかったのだろうと隼人は淡々と告げる。
 
「誰が?」
「……確定はしていないが、おそらくM-ADCの営業部、勇気和人だ」
「勇気って、シラカワ製作所にいた?」
 あのチャラい人と言われた遥は頷いた。

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