こじらせCEOの壮大すぎる初恋計画 〜二代目女社長、冷徹なライバルに理不尽な政略結婚を迫られたはずが、すべては22年前からの策略でした!?〜
「なによ、調子狂うわね。いつもの俺様はどこに行ったのよ」
「は? 俺様?」
 遥は立ち上がると、隼人を指差す。

「いーい? よく聞きなさいよ。私は半年で売り上げを倍にするけど、M-ADCからおこぼれをもらって達成する気はないんだから!」
 あんな会見をしたら、取引先が戻ってきてズルしたっぽいじゃないのと文句を言いながら遥は腕を組んだ。
 
「うちのエンジニアたちはすごいのよ。会社の建物なんてなくたって、ちゃんと最高のシステムが出来上がるんだからね」
 じゃあ、カレーができたら呼んでと、遥は言いたいことだけ言って自分の部屋へと戻っていく。

 キッチンに取り残された隼人は、遥の予想外の行動に笑いを堪えた。
 
『がんばったら最高のシステムが出来上がるんだからね。うまくいかないからって泣いてる暇なんてないんだから!』
 プログラミング教室で昔、遥に言われた言葉とあまり変わっていない。
 本当に眩しすぎて困る。
 
「優作さん、すみません。やっぱり諦められそうにないです」
 隼人はスマートフォンを取り出し、写真を表示する。
 ツクモソフトのプログラミング教室で、やっと完成したゲーム画面を見せながら遥と一緒に撮ってもらった写真。
 一年も一緒にいたのに、写真はこの一枚だけだ。
 
 せっかく身を引こうと思ったのに。
 今後は惜しみなくツクモを支援するので社員二人の愚行を許してほしいと懇願し、ロサンゼルスに帰ろうと思ったのに。
 あんなカッコいい宣言をされてしまっては、手放せそうにない。

「後悔するなよ、遥」
 隼人はスマートフォンをポケットに入れると、鍋を弱火にし、荷物を持って部屋へ着替えに行った。

     ◇

 カレーとサラダを食べ終わった遥と隼人は、珍しくリビングの大画面で映画を見た。
 テレビのニュースでやるほどの事件ではないが、うっかり見てしまっては気まずくなるし、パソコンを開けばメールやWebニュースがイヤでも出てきてしまう。
 今日だけは何もしないで過ごそうと、映画が見たいと言ったら隼人は同意してくれた。
 けれど――。

「字幕は疲れるわ」
 遥はなんで日本語吹き替えではないのかと隼人に文句を言った。

「ここは日本なのよ。日本語でいいでしょう?」
「口と言葉が合わないと変じゃないか?」
「そんなの気にしないわ」
 仕方がないなと隼人は音声を日本語に変える。

 その映画は歌手になりたい女の子が努力の末に成功を手に入れる成り上りモノ。
 怖いのはイヤ、銃や喧嘩もイヤ、SFも難しいと散々注文を付けた遥のために選んでくれた映画だったが、意外にも気に入ってしまった。

「なんで泣く」
「だって、がんばったのよ、あの子」
 鼻をズビズビさせながら遥は真剣にクライマックスを見る。

「遥に似ているだろ?」
「どこが?」
 こんな美人じゃないと遥が拗ねると、隼人は笑った。
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