こじらせCEOの壮大すぎる初恋計画 〜二代目女社長、冷徹なライバルに理不尽な政略結婚を迫られたはずが、すべては22年前からの策略でした!?〜

27.これはきっと不具合

 一部の週刊誌に書かれていた「会社の火事を理由に結婚を迫る悪女」という記事は、あの会見を境に、あっという間に「22年間の純愛、現代のシンデレラ」という極上のロマンスへと塗り替えられた。
 今度はネタの出どころ、伊集院製薬のお嬢様の妄想劇が週刊誌を賑わせる。
 あのネイル事件も言及され、ネイル店はますます予約が殺到し、とても料理教室に通える状態ではなくなってしまった。
 
 ニュースを見た20人もいないツクモソフトの社員は当然大パニック。

「忙しすぎて倒れる。マジ、無理」
「俺だってプログラミング教室の時からずっとハルカちゃんを狙ってたのに! あんな執念男に取られるなんて」
 悲鳴を上げる佐久間の後ろで、天才富樫がキーボードを叩き折りそうな勢いで嘆く。
 そして当時、子どもたちに教えていたヤスは、「俺がふたりも天才を作り出した」とドヤ顔をしながら、M-ADC社員たちとの交流係を自ら名乗り出た。
 
 ずっとツクモを支えてきてくれてきた彼らの給料は、合併後はおよそ2倍になった。
 忙しさも倍かもしれないが。
 
 M-ADCの日本支店はアメリカで開発されたシステムを日本版に改造し販売する目的で作られた会社だったため、エンジニアは少なく、開発部はほぼツクモのメンバーで構成された。

「はぁ~、ここが落ち着くわ」
「ハルカちゃん、またサボり?」
「サボってないわよ、休憩よ」
 社長室が広すぎて落ち着かないと、遥が開発部に遊びにくるのはよくあること。

「ハルカ、焼き鳥いこうぜ。富樫と3人で」
 佐久間は営業部だが、特別に開発部にもデスクを設けた。
 お客さんの要望をすぐに開発にフィードバックするというツクモの方式を無くしたくなかったからだ。
 
「串カツでもいいぞ」
「え~? だったら」
「……だったら?」
 こんな場所で聞くはずがないバリトンの声に遥の身体はビクッと揺れる。
 浮気かと腕を組みながらこちらを見ている黒豹のような男に、遥は視線を泳がせた。
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