幼馴染のち恋模様

その後から少しずつ葵と距離ができるようになった。気まずいわけではないがなんとなく避けられている気がしてもどかしかった。

大学が別になり連絡を取り合うことも減っていったうえに、俺はロンドンへの留学が決まり、そのまま向こうで就職。勉強や仕事に忙殺される毎日だった。

連絡を取ろうと試みるも「お掛けになった番号は現在使われておりません」と機械的なアナウンスが流れるし、メッセージも既読がつかない。
葵と仲の良かった真緒にも連絡を入れるが「お前の出る幕はない。悔しかったら自分でなんとかしな」と早々に切られた。真緒は出会った時からなぜか俺に対して当たりが強い。俺は何故こんなに真緒から嫌われているのだろうか・・・?

高校の友達と電話で話す機会があればそれとなく葵の情報を引き出したりしていたが、その度に付き合っている人がいるだの、結婚目前らしいだの、心を抉るワードたちに打ちのめされた。

葵のことは諦めろという神からの思し召しなのだろうかと、向こうで知り合った日本人の女性と付き合ったりもした。
その彼女には「私を通して誰を見てるの?私のこと、別に好きじゃないでしょ」と言って振られた。そこで初めて彼女を通して葵を見ていることに気がつき思った。

多分俺は、この先一生、葵しか愛せない_______。

葵に相手がいようが関係ない。俺は死ぬまで葵のことを好きでいる。
覚悟が決まり、寄ってくる女避けに左手薬指に指輪をはめることにした。この指輪が後々、俺と葵の関係を拗れさせる要因になるとはこの時の俺は思ってもいなかった。

葵と会わなくなって8年が経った頃、独立して自分の建築事務所を設立するため日本に戻ることになった。大好きな地元の街を感じたくて事務所は地元の霜月がある都市に構えた。
早速、実家に帰って葵のことを聞きたかったのだが、喜ばしいことに設立と同時に仕事が次から次に舞い込んだ。土日も返上して徹夜して作業にあたることも多く、葵を探す前に己がくたばるのではないかと思うくらいだった。

やっと人材も集まり仕事が落ち着いてきたのが、一年経った今年の冬。
なんとかペースも掴めてきたので、大きな案件にも手を出すことにした。12月下旬に、昨年受けたインタビュー記事を見て地元である霜月の駅前開発プロジェクトに抜擢され、こんな好案件はないとすぐに承諾。
それに合わせて霜月のタウン誌を発行している出版社から取材の依頼が来た。どんなことが書かれているのかとそのタウン誌を読んでいた時に見つけた。小さな字で端に書かれている『柚月葵』の文字。見間違いかと何度も確認したが間違いなく書かれている愛しい人の名前。
すぐに出版社に承諾の連絡を入れ、取材は葵を担当にしてくれと指名した。

そうしてやっと手に入れたチャンスだったのに・・・。
いや、まだ諦めるには早い。このプロジェクト中に会う機会はいくらでもあるはずだ。
もう、手をこまねいていただけの幼い自分ではない。欲しいものは絶対に手にいれる。

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